日本の再エネ電源別にみる現状と課題――各業界団体の政府に対する要望は?自然エネルギー(1/5 ページ)

調達価格等算定委員会において、毎年恒例の再エネ電源種別の業界団体ヒアリングが実施された。そこで明らかになった各電源における現状と課題と、それを踏まえた各業界団体からの要望の内容をまとめた。

» 2022年11月14日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 FIT/FIPの方向性を決める調達価格等算定委員会において、毎年恒例の再エネ電源種別の業界団体ヒアリングが実施された。

 各業界団体から報告される再エネ発電のコスト動向や課題、要望等は、翌年(翌々年)以降のFIT/FIP対象や調達価格/基準価格等の検討の参考情報とされる。

太陽光発電の現状と課題――太陽光発電協会ヒアリング

 第6次エネルギー基本計画において、太陽光発電の2030年度末導入量は104〜118GWが掲げられており、これを達成するためには年間4〜5GW程度の新規認定(事業用)が必要と試算されている。

 ところが足元の事業用太陽光の新規FIT認定量は2021年度で約1.3GWに留まっており、新規導入量も3.7GWと前年比で25%減少している。新規認定量の低迷が続くことにより、今後の年間導入量は2GWを下回ることが予想されており、導入量の減少や事業者の撤退は、コスト低減のブレーキとなることが懸念されている。

 なお事業用太陽光発電のコスト目標は、トップランナーで2025年、業界平均で2030年に7円/kWh(調達価格としては8.5円程度)を目指すことが宣言されている。

 ところが足元の資機材価格の高騰や円安により、太陽電池パネルやPSC等のシステム機器、工事費が上昇しており、2021年度と比べ2022年度は15%以上、2023年度は20%以上の上昇率を予想する事業者が最多となっている。

図1.事業用太陽光のコスト上昇率(2021年度比較) 出所:太陽光発電協会

太陽光発電協会(JPEA)からの要望事項

 太陽光発電においては現在、50kW以上の設備がFITとFIPを選択可能(FITからの移行も可能)であり、250kW以上はFIPのみが選択可能(2024年度以降)となっている。JPEAでは、50kWの閾値を「10kW以上」に下げ、低圧太陽光もFIPを選択可能とすることを要望している。

 JPEAはこの理由として、意欲のある事業者のチャレンジを促し、FIPに対応できる事業者やアグリゲーターの育成を後押しすることで電力市場への統合を推進することを挙げている。

 実際に、10〜50kWの低圧太陽光は認定件数で95%(74万件)、認定容量で32%(2,173万kW)を占めており、小規模太陽光はアグリゲーターによる支援が不可欠であると考えられる。

 能力の高いアグリゲーターが複数成長することは、低圧太陽光だけなく、高圧太陽光や他の再エネ電源にも有益であると期待される。

 また現在、FIT低圧事業用太陽光発電(10〜50kW)では、自家消費率30%以上もしくは営農型等の「地域活用要件」が課されているが、このことが低圧太陽光の案件開発のブレーキの一つとなっていると考えられている。

 このためJPEAでは、

  1. FIPを新規選択、あるいはFITからFIPに移行した低圧事業用太陽光発電
  2. 温対法における促進区域での促進事業に認定される案件
  3. 自治体・地方公共団体が所有する土地や建物に設置される低圧事業用太陽光発電

に関しては、地域活用要件を満たしていると「みなす」ことを要望している。2および3の案件は、自治体等の関与により一定の規律が働く可能性が高いものの、1の「みなし」是非については、委員からは慎重な検討が必要であることが発言されている。

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