再エネ普及の課題「地域社会との共生」、政府が導入する新ルールの方向性とは?法制度・規制(1/5 ページ)

国内で再生可能エネルギー電源の普及拡大が進むなか、課題の一つとして顕在化してきた「地域社会との共生」。資源エネルギー庁は新たなワーキンググループを設置し、地域社会との共生に向けた事業規律の在り方についての検討を開始した。

» 2022年11月22日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、再エネ電源のさらなる大量導入が必要とされている。本来、再エネ電源の導入にあたっては、地域社会との共生が大前提とされるが、実際には一部の事業において安全面への懸念や地域社会とのコミュニケーション不足等の課題が指摘されている。

 資源エネルギー庁の「情報提供フォーム」に対しては、柵塀・標識の未設置やメンテナンス不良、説明会開催や住民への説明等の対話が不十分であるなど、2016年10月〜2022年2月末までに合計850件の相談が寄せられている。

 このため近年では、再エネ発電設備の設置に抑制的な条例(再エネ条例)が増加しており、2021年度には全国の自治体の約1割に当たる184の自治体が抑制的再エネ条例を制定している。

図1.情報提供フォームへの相談件数(電源種別) 出所:再エネ長期電源化・地域共生WG

 また電力系統や再エネ電源適地の制約が顕在化する中で、新規開発だけでなく、既設の再エネ設備の長期的な活用も必要とされている。

 このため資源エネルギー庁は2022年10月に「再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ(WG)」を設置して、地域社会との共生に向けた事業規律の在り方等に関する検討を開始した。なおすでにWGは、関係団体からのヒアリングを含めて、合計3回開催されている。

再エネ特措法 事業規律の強化

 2012年のFIT制度開始以降、再エネ電源の導入は大幅に拡大したが、未稼働案件等の不適切な案件も増加したことから、FIT法(再エネ特措法)や省令はこれまで複数回の改正が行われ、次第に事業規律が強化されてきた。

図2.再エネ特措法の認定と関係法令の順守 出所:再エネ長期電源化・地域共生WG

 これにより現在、事業計画の認定にあたっては、条例を含む関係法令の順守が求められている。しかしながら認定申請時点では、すべての各種関係法令の許認可取得までは必要とされておらず、事後的に関係法令を順守することへの「誓約」を認定申請書において求めている。

 もし関係法令の許認可を取得せず事業を実施している場合は、FIT認定取消の事由となる。

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