FIT制度では、いわゆる発電所の転売(認定事業の譲渡)が可能であり、現実に一定程度の譲渡が行われている。
また再エネ電源の開発(企画・設計・施工)に特化する事業者や、設備運用・管理に特化する事業者など、業界内でも一定の専門化も進んでいるため、小規模案件の集約化や長期利用、効率の良い再エネ開発のためには、事業譲渡は今後一層重要となり、むしろ促進されるべきものと考えられている。
しかしながら、FIT電源の所有者(事業者)が変わることは、地域住民とのコミュニケーション不足によりトラブルが発生する一因ともなっている。このため関係法令に違反している等、すでに認定基準に違反している案件については事業譲渡の変更認定を不可とするなど、厳格な対応を行う予定である。
また、事業譲渡の際に必要となる変更認定申請においても、新規認定案件と同様に、説明会開催等による事前周知を変更申請の要件とする。
なお、特別目的会社(SPC)が再エネ電源を所有する場合、事業者名は変わらずとも、実質的な所有者が変更となる場合もある。これについても同様の手続き強化の方向性が示されている。
再エネ発電事業は一般的な事業と同様に、その業務の一部(大半)を外部の専門事業者に委託することが可能であり、経済性の観点から実際に広く委託・再委託が行われている。
現行制度では、事業規律の対象は「認定事業者」であるものの、委託先・再委託先が認定計画・認定基準に違反した場合における認定事業者の責任は明確ではなかった。
このため今後は、認定事業者に委託先・再委託先に対する「監督義務」を課し、監督義務不履行があった場合は、認定事業者に対して認定の取消しを行うこととする。
また今後、ガイドラインにおいて認定事業者と委託先間の契約に含めるべき事項(定期報告体制、再委託時の認定事業者の事前同意等)を定めることとする。
今後の再エネ電源のさらなる大量導入に向けては、地域社会との共生は必須条件である。今回の改革(手続き強化)は、長期的な視点では不可欠であり、本来進むべき線路に乗り換えるだけとも言える。
ただし一連の認定手続きの単純な強化だけでは、従来と比べて、再エネ電源開発リードタイムの長期化、発電コスト低減の困難化、新規開発案件数の低迷などに繋がるおそれは否定できない。
デジタル技術の活用や許認可手続きの最適化、金融機関や自治体との連携強化等、再エネを取り巻く全体的な制度環境の整備を同時並行で進めることにより、優良な再エネ電源がスピーディに導入されることを期待する。
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