電力供給の「予備力算定」が大幅見直し、容量市場での調達量は増加へエネルギー管理(1/5 ページ)

近年、日本国内で頻発した電力需給の逼迫などを受け、電力の供給信頼度評価の在り方が見直されている。政府では供給予備率の算定方法の見直しなどを進めており、それに基づく試算によると、容量市場オークションにおける供給力調達量も増加する見通しとなった。

» 2023年01月17日 08時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 電力の安定供給のためには、適切な供給力・予備力を確保することが不可欠である。現在日本では、電力の供給信頼度は「EUE」と呼ばれる確率的手法により算定されているが、近年では電力需給の逼迫(ひっぱく)が頻発している。

 このため電力広域的運営推進機関の「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」では、現在の供給信頼度評価の在り方を検証し、一定の見直しの方向性を整理した。これに伴い、容量市場オークションにおける供給力調達量も増加する試算も示されている。

供給信頼度指標の振り返り

 「供給信頼度」の指標には、供給力不足(停電)の回数や停電時間の長さ等を基準とする複数の方法が存在し、諸外国の状況もさまざまである。

 日本では2019年以前は、「LOLP:Loss of Load Probability」指標が採用されており、LOLP「0.3日/月」が目指すべき供給信頼度基準として設定されていた。同時に、分かり易さの観点から、適正予備率の確保を指標として管理していた。

図1.供給信頼度の指標例 出所:調整力・需給バランス評価委員会

 ところが再エネ(特に太陽光発電)の大量導入に伴い、太陽光発電出力が低出力(またはゼロ)となる夏季点灯帯や冬季夜間などにおいて供給予備力が小さくなる事象が増加し始めた。

 よって、従来の最大需要時(のみ)の1点評価から年間8,760時間を対象とした評価を行うことの必要性が増し、確定値ではなく、確率論に基づき評価する手法が導入されることとなった。

 エリアの規模によらず全国一律の供給信頼度基準を設定できることなどから、日本ではEUE(Expected Unserved Energy)、正確には「需要1kWあたりのEUE」:1年間における供給力不足量の期待値[kWh/kW・年](見込み不足電力量)が採用されることとなった。

 今回、広域機関ではEUE算定方法の見直しについて、以下の4つの論点に沿って検討を行った。

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