電力供給の「予備力算定」が大幅見直し、容量市場での調達量は増加へエネルギー管理(3/5 ページ)

» 2023年01月17日 08時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

3.年間計画停止可能量および追加設備量の見直し

 発電設備を長期安定的に運転するためには適切な点検や補修が不可欠であり、これに伴い一定の停止期間が発生する。このため供給力評価においては、一定の計画停止量があらかじめ考慮されている。

 通常、火力・水力発電所の補修計画は夏季や冬季の高需要期を避けているが、近年の予備率低下に対処するため、高需要期から低負荷期の補修スケジュールシフトが一層強まっている。また、補修量の年間合計も増加傾向が続いている。

図4.火力・水力発電所の月別補修量(単位:万kW) 出所:電力・ガス基本政策小委員会

 現在のEUE算定では、2019年度供給計画の計画停止量を参考に、年間計画停止可能量29,922万kW・月(月換算1.90カ月)を確保するための追加設備量が算定されている。

 ただしこの1.9カ月とは、補修計画の繰り延べ等の調整がなされた後の停止量である。今後も一時的に調整を行ったとしても、計画停止が繰り延べられることで結局次年度以降に増加することや、火力の老朽化が進むこと等により、中長期的には追加設備量が不足することが懸念されていた。

 このため今回あらためて至近3カ年の供給計画諸元をもとに試算したところ、月によっては停止量が停止可能量を超えるため、必要供給力を満たせないことが判明。見直し後の年間計画停止可能量は、2.1ヶ月と算定された。

図5.年間計画停止可能量の確認(2022年度供給計画の例) 出所:調整力・需給バランス評価委員会

 ただし2022年12月現在、2024年度容量市場の受け渡しに向けて、容量停止計画の調整を行っているところである。このため計画停止可能量の見直し要否については、この調整結果も確認のうえで判断される。

4.計画外停止率算定方法の見直し

 現在、計画外停止とは、翌日計画で稼働予定の電源において、トラブル停止により減少した発電可能量を対象としている。このため、あらかじめ数日後に「計画的に」運転制約や停止を予定する場合には、計画外停止と扱われていない。

図6.現在の計画外停止率の対象範へ出所:調整力・需給バランス評価委員会

 この集計方法に基づく現在の計画外停止率は、表1のとおりである。なお太陽光・風力は、EUE算定時の出力比率に計画外停止が考慮されているため、計画外停止率は設定されておらず、地熱・バイオマスでは火力の計画外停止率が準用されている。

表1.現在の計画外停止率 出所:調整力・需給バランス評価委員会

 現在の集計方法は事業者の実務負担も考慮して決定したものであるが、EUE算定の観点では、本来、供給計画時点から実需給までの供給力減少量を計画外停止と扱うことが望ましい。

 この場合、設備トラブル等による供給力のマイナスと、作業早期終了等による供給力のプラスといった、供給計画時点からの増減両面の変化を抽出することが可能となる。

 なお、この「供給計画時点からの停止・抑制の『変化量』」は純粋なトラブル停止率とは異なり、あくまでEUE算定に用いる数値であるため、「EUE算定向け計画外停止率」と呼ばれている。

 また一般的に火力電源は起動指令から定格出力に至るまでにある程度の時間を要するため、実需給の「前日」が起点となる従来手法では供給力として見込まないこととして、火力の待機停止電力量は計画外停止算定の対象外としている。

 この手法の場合、待機停止時間が長い電源については、計画外停止率が実態以上に高く見えることとなる。

図7.従来手法における火力電源の待機停止の扱い 出所:調整力・需給バランス評価委員会

 今後は供給計画時点からの変化量を算定することとしたため、火力の待機停止時間を運転時間とみなす(分母に織り込む)ことにより、待機停止時間が長い電源についても、EUE算定向け計画外停止率を適切に算定することが可能となる。

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