木質バイオマスやポリエステルを高効率に原料化、新たな触媒の開発に成功省エネ機器

東京都立大学大学院の研究グループは、木質バイオマス由来化合物から有機ケイ素化合物などの有用化成品を効率よく合成できる新しい触媒の開発に成功したと発表した。従来、炭素資源として利用されていなかったポリエステルの原料化にも応用可能な触媒で、新しい資源循環経路の提案や、カーボンニュートラルへの貢献が期待されるという。

» 2023年02月24日 06時00分 公開
[スマートジャパン]

 東京都立大学大学院の研究グループは2023年2月、木質バイオマス由来化合物から有機ケイ素化合物などの有用化成品を効率よく合成できる新しい触媒の開発に成功したと発表した。従来、炭素資源として利用されていなかったポリエステルの原料化にも応用可能な触媒で、新しい資源循環経路の提案や、カーボンニュートラルへの貢献が期待されるという。

 再生可能な炭素資源である木質バイオマスや、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステルなどには、多くの炭素-酸素結合(C-O 結合)が含まれている。しかしこれまではC-O結合を炭素-水素結合(C-H 結合)に変換することで付加価値の低い炭化水素へと誘導する触媒系が多く、これらから有用な化成品を製造するためには多段階のプロセスにおいて多大なエネルギーを費やす必要があった。そのため、より直接的に有用化成品へと誘導できる新しい結合変換技術の開発が求められていた。

炭素-酸素結合の変換による有用化成品合成のイメージ 出典:東京都立大学

 今回研究グループは、まずセラミックスの一種である酸化ジルコニウムに、直径が3ナノメートル程度の金ナノ粒子を担持した触媒を調製。この担持金ナノ粒子触媒とケイ素源としてジシランを用いることで、木質バイオマスなどから容易に得られるエステルやエーテル中のC-O結合が効率的にC-Si結合へと変換され、有機無機ハイブリッド材料や医薬品などの原料として非常に付加価値の高い化合物である有機ケイ素化合物を効率的に合成できることを初めて明らかにした。

 この担持金ナノ粒子触媒はさまざまななエステル、エーテル、ジシランの組み合わせの反応に有効であるため、多岐にわたる有機ケイ素化合物を合成することが可能だという。

開発した触媒による有機ケイ素化合物合成のイメージ 出典:東京都立大学

 また、同触媒系は、プラスチックの一種であり多くのC-O結合を有するポリエステルを原料として有機ケイ素化合物を合成することも可能。一般的にポリエステルの分解には多量の酸・塩基を用いる必要があるだけでなく、排水処理など反応後の処理も煩雑という課題があるが、この触媒系は中性条件下で行うことができるため、環境負荷を抑えたプラスチック分解が行える利点もあるという。将来的に、廃棄されたプラスチックから有用化成品を直接製造するプロセスへの応用が期待されるとしている。

 また、反応後の担持金ナノ粒子触媒は、ろ過などによって容易に回収することができ、生成物に異物として混入することもないという。さらに高い活性を示すにも関わらず、化学的に非常に安定であるため、反応に繰り返し使用することも可能です。金は高価な金属だが、こういった担持金触媒の高い耐久性は製造コストの低減にも寄与できるとしている。

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