2024年度から始まる託送料金の「発電側課金」、その概要と発電事業者への影響を解説再エネ発電事業者にも影響(1/4 ページ)

再エネ大量導入への対応や、送配電設備の老朽化対策に向けた送配電設備の維持・拡充に掛かる費用の確保に向け、2024年度から導入されることになった託送料金の「発電側課金制度」。発電事業者の事業展開に影響する同制度について、その概要を解説する。

» 2023年03月01日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 再エネ電源の増加に応じた新たな系統整備や、高度経済成長期に設置した高経年送配電設備の修繕・取替など、送配電関連費用の増大が想定されている。今後の託送料金を抑制するためには、送配電設備のさらなる効率的な利用が求められる。

 このため国は2016年以来、送配電費用の負担の在り方を検討してきたが、2024年度から託送料金の「発電側課金制度」が導入されることとなった。

 発電側課金制度は、系統を効率的に利用するとともに、再エネの導入拡大に向けた系統増強を効率的かつ確実に行うため、送配電設備の維持・拡充に必要な費用について、系統利用者である発電事業者に一部の負担を求めるものである。

現行の託送料金制度の課題

 現行の制度では、送配電設備費用のすべてを託送料金というかたちで小売電気事業者が負担している。小売事業者が負担した託送料金は、小売料金の一部として、最終的には需要家が負担している。発電事業者が託送料金を負担しない現行制度は、受益と負担の観点で公平性に課題のある仕組みと言える。このため、発電側課金を導入することにより、託送料金の一部を発電事業者が負担することに改めることとした。

図1.現行の託送料金制度と発電側課金の導入後 出所:制度設計専門会合

 なお図1下段のように、発電側課金の導入後も、社会全体の費用総額が変わるわけではなく、あくまでその切り分け方が変わるだけであるため、需要家が負担する電気料金総額も変わらない(中長期的には低下が期待される)。

 また、エリアごとの需要家負担の公平性の課題もある。託送料金は一般送配電事業者ごとに定められているため、エリアごとに託送料金は異なる。特定のエリアで再エネ導入量が増大し、系統増強費用が増加した場合、その費用は当該エリア内の需要家が負担することとなる。

図2.異なるエリアの需要家による託送料金の負担 出所:制度設計専門会合

 また発電事業者は現行制度において、当初の接続費用を除いては送配電費用を意識することがない。

 託送料金の発電側課金導入後は、託送料金の一部負担という経済的インセンティブを発電事業者に与えることにより、電源を新設する場所を熟慮することが想定され、これにより送配電設備投資の抑制と効率的な系統形成が実現すると期待されている。

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