脱炭素化で注目の「カーボン・クレジット」、国内外の動向と日本での実証結果GXリーグでも活用(3/5 ページ)

» 2023年03月30日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

J-クレジット供給面の動向

 国は、J-クレジットの累積認証量の2030年度目標を1,500万トン-CO2としており、現時点の累積認証量は889万トン-CO2に上るが、その6割が国の「リンケージ事業」によるものである。

図4.J-クレジット累積認証量の内訳 出所:カーボン・クレジット環境整備検討会

 リンケージ事業は、国による個人向けの再エネ・省エネ設備等の導入補助金の一部として運用されており、例えば家庭用太陽光発電の導入補助金の受給者は、その対価として、環境価値を国に譲渡することとなる。J-クレジット創出手続は国が一括して行い、創出されたJ-クレジットは国が売却し、売却益を国庫に納付している。

 ただし、太陽光や燃料電池の補助事業はすでに終了しており、認証対象期間が順次終了していくため、これらの事業によるクレジット認証量は今後減少が見込まれる。

 このため国はJ-クレジット創出量拡大のため、J-クレジット新規方法論の策定を進めており、2022年度には水素・アンモニアに関する方法論を策定したほか、プログラム型プロジェクトの活用に向けた制度見直しを実施している。

 また現時点、森林吸収系J-クレジットの累計認証量は約18万トン(全認証量の2%)に留まるが、林野庁では森林管理プロジェクトの大幅な制度見直しにより、クレジット創出を推進している。近年、登録時の認証見込量が10万トン以上の大規模プロジェクトが増加傾向にあり、今後、森林吸収系クレジットの市場供給量が増加すると期待されている。

表1.森林吸収系J-クレジット大規模プロジェクト抜粋 出所:林野庁

デジタル技術を活用したJ-クレジットの創出

 J-クレジットは有価で取引可能な商品であると同時に、環境十全性確保の観点から、J-クレジットの創出手続きには一定の厳格さが必要とされる。他方、手続きの煩雑さがクレジットの効率的な発行の課題とされてきた。

 このため環境省では、ブロックチェーン技術を用いたクレジット認証手続きの簡易化を検討しており、まずはスマートメーターから発電量が取得できるなど、技術的な難易度が低い太陽光発電を対象として、クレジット認証・発行の簡易化の実証実験を行うこととした。将来的には、太陽光発電以外の方法論にも対象を広げ、クレジット創出量の拡大を目指している。

図5.ブロックチェーン技術を用いたJ-クレジット認証手続きの簡易化 出所:環境省

JCM (二国間クレジット制度)の動向

 JCM(二国間クレジット制度)とは、主に途上国を対象として日本の優れた脱炭素技術や製品等の普及や対策実施を通じ、実現したGHG排出削減・吸収量の一部をJCMクレジットとして、日本のNDC(国が決定する貢献)の達成に活用する仕組みである。現在、JCMパートナー国は25カ国である。

 国は、2030年までの累積で1億トン-CO2程度の排出削減・吸収量を目標としており、現時点の累積削減量は約2100万トンに上る。

図6.JCMのイメージ 出所:環境省

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