日本でも「GXリーグ」が創設されるなど、企業の脱炭素化に向けた動きが加速している昨今。企業のカーボンニュートラル施策の一つとして利用されるのが「カーボン・クレジット」だ。国内外のカーボン・クレジット制度の動向と、日本で実施された実証市場の結果をまとめた。
GXリーグにおける排出量取引制度である「GX-ETS」の第1フェーズが、2023年4月から開始される。GX-ETSの参画企業は、超過削減枠の取引以外に、「適格カーボン・クレジット」を使用することにより、自主目標を達成することが可能となる。現時点で、この適格カーボン・クレジットに該当するものは、J-クレジットとJCM(二国間クレジット制度)クレジットである。
カーボン・クレジットの活用は、社会全体での費用効率的な排出削減を可能として、クレジット取引価格は企業の脱炭素投資の目安として機能する点で重要とされている。
経済産業省は、「カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会」の第5回会合において、カーボン・クレジットを巡る国内外の最新の動向や「カーボン・クレジット市場」の実証結果を報告している。
J-クレジット制度とは、省エネ・再エネ設備の導入や森林管理等による温室効果ガス(GHG)の排出削減・吸収量を国がクレジットとして認証する制度であり、累計認証量は889万トン-CO2に上る。
J-クレジットは、これまでも温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)におけるGHG排出量の報告や自主的なカーボン・オフセット、RE100等の目的で活用されてきたが、2022年度には使用量(無効化量)が大きく減少している。
これは、非化石証書制度が2021年度に変更されたことが理由である。従来、FIT非化石証書の最低価格は1.3円/kWhであったため、J-クレジット(再エネ)も同程度の価格水準となっていた。ところが2021年11月以降、FIT非化石証書の最低価格が0.3円/kWhに引き下げられたことにより、J-クレジットが割高となってしまったため、温対法・電力排出係数調整に活用されたJ-クレジット無効化量は激減した。
また従来、FIT非化石証書は小売電気事業者のみが購入可能であったが、2021年以降、需要家も直接FIT非化石証書を購入できるように変更された。このため、オフセット・RE100等を目的とした需要家は安価な非化石証書を購入するようになったため、J-クレジット無効化量が減少している。
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