蓄電池は10MW以上が対象に、「長期脱炭素電源オークション」の調整機能要件法制度・規制(1/4 ページ)

脱炭素電源への投資促進を目的に、2023年度から始動する「長期脱炭素電源オークション制度」。蓄電池や揚水発電、水素・アンモニア火力等が同制度に参加する場合、調整機能を持つことが要件とされている。こほのど、要件として求める調整機能の具体的な基準が検討された。

» 2023年03月31日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 変動性再エネの導入が増加する中で、電力系統を安定的に運用するためには、調整力や慣性力を計画的に確保していくことが必要である。これまで、調整力供給の多くを火力発電が担ってきたが、カーボンニュートラル実現に向けては、調整力においても脱炭素化を進めることが重要とされる。

 また脱炭素電源への新規投資を促進するため、「長期脱炭素電源オークション制度」が新たに創設され、2023年度から運用がスタートする。長期脱炭素電源オークションに参加する電源のリクワイアメントとして、蓄電池や揚水発電、水素・アンモニア火力等については、調整機能の具備が求められることとなった。

 このため広域機関の「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」では、蓄電池等に対して、具体的にどのような調整機能を求めるか検討が行われた。

 現在、電源等に対して調整機能の具備を求めているルールとしては、需給調整市場における参加要件およびグリッドコードの要件が存在する。なお、蓄電池に対するグリッドコードの具体化については、別途、広域機関の「グリッドコード検討会」で議論が進められている。

 このため本稿では、あくまで長期脱炭素電源オークション参加要件とされる調整機能について報告する。

一般送配電事業者の系統連系技術要件

 電力系統に連系する電源にどのような技術要件を求めるかはグリッドコードにおいて定められており、日本では、一般送配電事業者による「系統連系技術要件(託送供給等約款別冊)」がその中心的存在である。

 例えば、東京電力パワーグリッド(東電PG)の系統連系技術要件(令和4年7月1日版)の抜粋は表1のとおりであり、特別高圧の火力発電(100MW以上)において、一定の周波数調整機能を具備することが求められている。(GF等の用語については後述する)

表1.東電PG 系統連系技術要件抜粋 出所:東電PG

 なおグリッドコード検討会での検討を踏まえ、一般送配電事業者各社では、2023年4月以降、系統連系技術要件を以下のように改定する予定である(赤字が変更部分)。

表2.改定後の系統連系技術要件抜粋 出所:グリッドコード検討会

GF・LFC・EDC調整機能の概要

 表1・2の系統連系技術要件では、GF・LFC・EDCという用語が使われているので、ここで補足説明しておく。

 まずGF機能(Governor-Free:ガバナフリー)は、系統周波数を一定に保つよう、自端で周波数の変化を検出し、同期発電機の調速機(ガバナ)が系統周波数の変化に追従して、発電出力を増減することをいう。数秒から数分程度の周期の負荷変動に対応する高速な調整力である。

図1.GF・LFC・EDCによる調整イメージ 出所:需給調整市場検討小委員会

 LFC機能(Load Frequency Control:負荷周波数制御)は、系統周波数を一定に保つよう、一般送配電事業者の中央給電指令所(中給)で周波数等の偏差から、偏差を解消する発電出力を計算し制御することをいう。数分から十数分程度の周期の負荷変動に対応する。

 またEDC(Economic load Dispatch Control:経済負荷配分制御)は、比較的長時間の負荷変動(十数分から数時間程度の周期)に対応するため、中給で、需要予測に合わせ先行的に発電出力を制御する。

 GF・LFC・EDCのそれぞれが対応する需給調整市場の商品は、図2のとおりである。

図2.各調整力の応動時間イメージ 出所:需給調整市場検討小委員会
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