電力の卸取引の実態は――発電・小売電気事業者へのアンケート結果が公開小売電気事業者の電源保有状況も明らかに(1/4 ページ)

資源エネルギー庁が、発電事業者と小売電気事業者に対して実施した、電力卸供給・調達の取引実態に関するアンケート調査を公表。各社の卸取引の最新状況や、実態が明らかとなった。

» 2023年04月04日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 近年、電力スポット市場の取引量が販売電力量の4割を超えるなど、スポット市場の流動性は大きく高まっている。他方、電力の安定供給や健全な競争を通じた経済性の確保のためには、中長期的な取引環境の整備も重要と考えられている。

 この検討の具体化に向けて、まずは現在の電力卸供給・調達の実態や取引における課題・ニーズを把握するため、資源エネルギー庁は発電事業者と小売電気事業者に対してアンケート調査を行った。

 アンケート対象は、発電事業者では発電容量(kWベース)上位の67社である。これは日本全体の発電容量の約9割をカバーする規模である。発電事業者からの回答数は30社であった。

 また小売電気事業者では、すべての事業者が対象である。具体的な対象事業者数は公開されていないが、最新の2023年度供給計画の提出事業者数は688社である。小売電気事業者からの回答数は205社であった。

 「電力・ガス基本政策小委員会」の第60回会合では、このアンケート調査結果の概要が報告された。

2022年度の収支見込

 アンケート調査は2023年2〜3月に実施されたので、2022年度の収支(純利益・損失)はあくまで見込みとなるが、発電事業者と小売電気事業者の収支は以下のような見込まれている(有効回答数=発電事業者28、小売電気事業者:186)。

図1.2022年度の収支(純利益・損失) 出所:電力・ガス基本政策小委員会

 足元では、新電力(小売電気事業者)の破綻や新規契約受付中止の報道を目にするが、回答のあった小売電気事業者の7割は黒字が見込まれている。他方、発電事業者の4割が赤字かつ前年度よりも損失増が見込まれている。アンケート調査ではこの理由は公開されていないが、燃料価格の高騰を卸料金に転嫁できていないことや、高値で仕入れた燃料の余剰分の転売損などが推測される。

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