上記の基本方針に基づき、提言内容は「1.マーケット」「2.ファイナンス」「3.ルールメイキング」の3つを柱にまとめられた。
GX産業は今後、世界的に重要となることから、その育成を通じて日本の国際競争力を強化する必要がある。特に、エネルギー危機は、スタートアップ企業の新たな技術による解決が期待され、スタートアップ支援策と合わせて行っていく必要がある。また、これらは経済合理性に基づくマーケットメカニズムを通じて行うべき。
10年間で150兆円超のGX投資は、日本の将来にとって最重要の投資である。20兆円規模のGX経済移行債は、メリハリのついた予算配分と効果的で無駄のない運用が必須である。130兆円超の民間資金は、民間の自律的な活動とイノベーションが促進されるものとする必要がある。
GX加速化のために、さまざまな関係者(関連省庁、地方自治体等)を横断的に調整する公平で透明性の高いルール整備(特にGXの中心である電力業界)が必要。また、GXを推進する人材の育成を通じて、国民全体で幅広く関与できる仕組みづくりが必要である。
提言1(GX産業の勃興を後押しするマーケットメカニズムの促進)においては、昨今のエネルギー価格高騰対策についても言及している。過度な対策は、かえって既存エネルギーへの依存を固定化し、今後のエネルギー源や産業構造の変化に伴って、結局は国際競争力を喪失してしまう懸念があるとして、「既存エネルギーの価格高騰対策は情勢を踏まえ段階的に縮小していくとともに、GX新産業・新技術への投資に予算等の資源配分をシフトしていくべき」とする。
また、企業が主体的にGX加速化に向けて取り組むためには、消費者が温室効果ガスの削減に取り組む事業・製品やサービスを適切に評価・選択する仕組みの構築、その仕組みを通じて各所で自発的な取り組みが促進されることが重要であると指摘。将来的には、企業による炭素情報開示のみならず、「現状では比較的少額/単発の補助金施策に留まっている消費者の行動変容促進施策についても、消費者がメリットやインセンティブを得られるようにすることが必要」であるとする。
提言2(150兆円超のGX投資の効果的なファイナンス)では、重点投資分野の具体例として「自動車産業」を挙げる。世界的にEVシフトが強まるなか、国内自動車産業の国際競争力やLCA(製品の製造から廃棄までのすべての工程における環境負荷)でのCO2削減効果を考慮した各種施策、国際的なルールメイキングへの関与が重要であるとする。また、EV・FCV等の新興技術の開発のみならず、「自動車産業が現在有する技術の他の成長分野(航空宇宙・ロボット等)への活用を含めた大胆な支援が必要」であると指摘する。
さらに、GX関連産業の中には、技術や市場が未成熟であることから、民間事業者として中長期の投資判断が困難なものもあることに言及。「長期・複数年にわたる支援スキーム」においては、GX経済移行債や基金等の活用を含む、政府による資金・投資計画の具体化を進め、事業者の予見性を高めることが重要であると強調する。また、「GX推進機構が政府債務保証等を積極的に行うことにより、GX産業の将来発展の予見性を確保するとともに投融資リスクを低減させ、130兆円超の民間資金を実際に引き出していくための仕組みを構築する」ことを求めている。
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