本連載でも「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」といった形で表記することがあるソーラーシェアリングですが、言葉としては「ソーラーシェアリング」が先にあり、その後に農林水産省が制度上の用語として「営農型太陽光発電」を用いるようになりました。
ソーラーシェアリングの定義については、発案者である長島彬氏の定義を引用すると「簡易な風圧対策と剰余の太陽光を有効利用することで太陽光発電のシステムの発電単価を抜本的に下げ、農林水産に供される土地はもとより全ての土地を、その生産性、利便性を損なうことなくその土地の向き、形状に制約されることなく発電用地に変えることを実現し、太陽光発電を人類エネルギー取得の主流にすることを目的」(特開2005-277038)とした太陽光発電システムであり、「光飽和点の特性より耕作地や牧草地の剰余の光線から、農産・畜産物とともに電力をも得る方法」(「ソーラーシェアリング」のすすめ(改2014a))とされています。
こうした定義を踏まえると、ソーラーシェアリングとは農地に限らず太陽光発電システムの導入ポテンシャルを大きく広げていくためのもので、ソーラーシェアリングによって農地を利用する際には、農作物の生育に必要となる以上の日射を活用して電気を得ていく仕組みであると解釈できます。
2012年以降のFIT制度による太陽光発電設備の大量導入が進む中で、営農型太陽光発電が「農地で太陽光発電を行うための抜け道」として利用されてきた事実があり、それが結果として営農状況の不適切な事例の増加を招き、今般の規制見直しに関する議論に至ったと言えます。一方で、これらの議論の中ではどう規制するかばかりが注目され、営農型太陽光発電のメリットや良い事例をどう広げていくかはほとんど触れられていません。ざっと考えられるだけでも営農型太陽光発電には下記のようなメリットがあります。
こうした要素を踏まえて、「何のために営農型太陽光発電を活用し、普及させていくのか」を改めて議論するタイミングが訪れているのだろうと考えています。
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