航空分野の脱炭素化はどうすべきか? 持続可能な燃料やクレジットの活用動向法制度・規制(1/3 ページ)

航空分野における脱炭素化はどのように進めていくべきか――。2050年カーボンニュートラル実現に向けた施策として、航空分野で検討が進んでいるSAF(持続可能な航空燃料)やオフセットクレジットの動向を中心に紹介する。

» 2023年09月12日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 航空分野におけるCO2排出量(2019年)は、国内航空で約1,000万トン、国際航空(日本企業によるもの)では約1,500万トン、世界全体では6.2億トンであり、全CO2排出量の約1.8%を占める。

 国際民間航空機関(ICAO)では、国際航空分野で2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする長期目標を採択しており、市場メカニズムを活用して排出削減を行う「国際民間航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム(CORSIA)」を導入済みである。

図1.航空分野の2050年カーボンニュートラルに向けたシナリオ 出典:定期航空協会

 国土交通省では「航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会」等において、多様な技術・動力源等の導入を前提とした、航空分野におけるCO2排出削減の取り組みを加速させるよう検討を進めてきた。

 図1のとおり、航空分野におけるCO2排出削減のアプローチとしては、機材・装備品等への新技術導入や管制の高度化による運航方式の改善等も非常に重要であるが、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、SAF(持続可能な航空燃料)の貢献割合は6〜7割を占める見込みであるため、本稿では主に、SAFやオフセットクレジットの動向を紹介したい。

航空機燃料のエネルギー密度

 現在、航空機燃料(ジェット燃料)としては主に「ケロシン」が用いられており、そのエネルギー密度は、リチウムイオン電池の60倍(重量当たり)、液体水素の約3倍(体積当たり)であり、航空機燃料の脱炭素化においては、ケロシンを代替し得るエネルギー密度を考慮する必要がある

図2.航空分野に使用され得る燃料等のエネルギー密度 出典:航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会

航空機の電動化や水素技術の導入見込み

 水素はジェット燃料に比べて体積は4倍以上であるため、大きな燃料タンクが必要となるなど、多くの技術的な課題が存在する。しかしながら、Airbus社は水素を燃料としたゼロ・エミッションを達成する旅客機の運用を目標に掲げ、3種類のZEROe機体コンセプトを提唱し、2035年までの商業運転開始を目指している。

 また航空機の電動化については、モーターの小型軽量化・高出力化や蓄電池のエネルギー密度向上、安全性・信頼性が課題となるが、ノルウェーは、2040年までに国内線を完全電動化する目標を掲げるなど、電動航空機の技術開発が進められている。

 国際的な業界団体Air Transport Action Groupによれば、航空機の電動化は、コミューター機(9〜50席、60分以下のフライト)やリージョナル機(50〜100席、30〜90分のフライト)を中心に、2020年代後半以降に導入が進むと想定されている。

 また水素に関しては、燃料電池が2025年代以降にコミューター機やリージョナル機を中心に、水素燃焼技術は2035年以降に中小型機(100〜250席、45〜150分のフライト)を中心に導入が進むと想定されている。

 中型機(図3のMedium haul)以下の航空機によるCO2排出量は航空機全体の約7割を占めており、その内、電動化/水素技術でアプローチ可能な航続距離2,000km以下の旅客機のCO2排出量は約4割と推計される。

図3.電動化や水素燃料の導入時期の見込み 出典:Air Transport Action Group
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