航空分野の脱炭素化はどうすべきか? 持続可能な燃料やクレジットの活用動向法制度・規制(2/3 ページ)

» 2023年09月12日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

SAF(持続可能な航空燃料)導入の取り組み

 将来的に最もCO2削減効果が高いと期待されているのがSAF(持続可能な航空燃料)の活用であり、国土交通省は2030年時点のSAF使用量として、「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」との目標を設定している。

 SAFとは、ライフサイクルCO2排出量が少ない等の持続可能性基準を満たすものであり、主にバイオマスに由来するジェット燃料である。現状では、SAFは化石燃料由来のジェット燃料と混合して使用されるが、混合前の純粋な SAFを「ニートSAF」と呼んでいる。

 SAFはさまざまな原料と製造プロセスの組合せによって製造されるが、我が国で開発が検討されている製造プロセスの例は図4のとおりである。

図4.SAFの製造プロセスの例 出典:航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会

 当面は廃食油等のバイオマスが主な原料となるが、世界的なSAF需要増大に応えるため、2050年時点では、合成燃料(水素とCO2を合成したもの)由来のSAFが半分程度を占めるという予測もある。

 従来のジェット燃料が100円/L程度であるのに対して、現状のSAF製造コストは、200〜1,600円/Lと割高であるが、2030年頃には従来燃料と同等の100円台/Lまで低減することを目標としている。

 航空燃料の製造方法及び原料の国際規格はASTM Internationalが策定しており、原料と製造方法の組合せによりAnnexに分類され、Annexごとに従来燃料との混合上限比率が規定されている。

表1.SAFに係る国際規格 出典:航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会

 CORSIAでは、2019年以降、国際航空によるCO2排出量を増加させないことを求めており、ANAとJALは2030年のSAFの利用目標10%をコミットしている。

 国交省がエアライン(本邦+外国)からヒアリング等により試算したところ、2030年時点では国内において171万kLのSAF利用(本邦+外航)が見込まれる。(図3の数量は、ニートSAF換算、日本国内の給油)

 なお、SAF製造・供給事業者における現時点の公表情報等から積み上げた2030年のSAF供給見込み量は約192万kLである。

 また、ANAとJALによる共同レポートでは、2050年に日本で必要なSAFは最大約2,300万kLと試算している。2050年の全世界のSAFの需要は、2.94〜4.25億kLが見込まれているが、2020年時点のSAF供給量は約6.3万kL(世界のジェット燃料供給量の0.03%)程度に留まっている。

図5.2030年時点の国内SAF需要の見通し 出典:航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会

 また、CORSIAに基づきベースライン85%で必要なオフセット量を算出の上、本邦及び外国エアラインが全てSAFを用いてオフセットする場合のSAF潜在需要量を試算したものが図4(赤色部分)である。グラフの灰色部分は図3と同じく10%SAF利用量であり、両者の差分(青色矢印)は、SAFの追加調達もしくはカーボンクレジットのいずれかで対応する必要がある。

図6.国内給油におけるSAFの潜在需要量 出典:航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会

 カーボンニュートラルを目指す世界の航空会社にとって、各国の空港においてSAFを給油できるか否かは、今後、就航地を選択するうえで重要な要素となる。日本の空港において、価格競争力のある高品質のSAFを安定的に供給する体制が構築できなければ、海外の航空会社からも就航地として選択されず、日本発着の国際線ネットワークが著しく棄損することが懸念される。

このため定期航空協会では、価格、品質ともに国際競争力のある国産SAFの安定的な供給体制を構築してくことを国に求めている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.