BL電源とは、地熱、一般水力(流れ込み式)、原子力、石炭火力を指している。このうち、石炭火力は他の電源種と比べて燃料費(変動費)が大きいことが特徴である。
大規模発電事業者(500万kW以上の発電規模を有する発電事業者等)は、制度的に一定量をBL市場に供出することが求められており、その供出上限価格はBL電源の発電平均コストを基本とした価格である。
このため、2022年度には石炭価格が高騰したことにより、BL市場供出価格も大きく上昇する結果となった。
BL市場ガイドラインにおいて、燃料費単価は、「価格変動リスクを勘案した価格(燃料先物価格等に基づき客観的に合理性が認められる手法で算定した価格)を用いる」とされているが、価格変動リスクの具体的な見積方法が定められているわけではない。よって、大規模発電事業者の裁量の余地が大きく、その価格算定次第では、実質的な「売り惜しみ」につながる可能性もある。
実際に、表5のように大規模発電事業者間でも石炭燃料費の見積単価は大きく異なり、これがBL市場供出価格の違いにも反映されている。
BL市場は受渡年度の前年度にオークションが実施され、年間固定価格で受け渡しが行われるため、売り手は燃料価格上昇リスクを供出価格に織り込むのに対して、買い手は燃料価格下落リスクを買い入札価格に織り込むこととなる。その結果、燃料価格のボラティリティが大きい局面においては約定が低調となりやすい。
また、一般公開されるBL市場約定価格は、相対卸契約の交渉に際しても参照されており、BL市場供出価格が高騰することがもたらす影響は、BL市場における取引にとどまらない可能性もある。
このような長期的な取引における燃料価格変動の影響を緩和する手段の一つが、燃料費調整制度(燃調)である。燃調のような燃料費を事後清算するスキームを導入すれば、大規模発電事業者のコスト回収の確実性が増すと同時に、小売事業者が過剰なプレミアムを負担することが避けられる。
BL市場の開始当初は、燃調等のオプションを具備しない商品を先行して取引開始したが、2023年度以降は部分的に燃調の仕組みを取り入れることとした。なおBL市場では「燃調」とは呼ばず、「事後調整スキーム(事後調整付取引)」と呼んでいる。
本スキームで対象とする燃料は石炭のみとして、石炭価格が1,000円/トン変動した場合の変動額(円/kWh)を、事後調整単価とする。事後調整単価は、事業者ごとに異なる単価を設定する方法とする。
現行の小売規制料金における燃調制度に倣い、BL市場の売入札時の基準石炭価格についてはオークション直前3カ月の全日本通関統計価格を参照し、受渡し時には受渡し月の3〜5カ月前の全日本通関統計価格を参照することとする。
なお、事後調整スキームを導入することにより、約定結果が明らかになるまで、どのような事後調整単価が適用されるか買い手には不明となるため、オークション開催前に事後調整単価(最低・最高・加重平均)を公開する。
1年商品については、これまでと同じく固定価格取引を各オークションで行うと同時に、第3回オークションでは、事後調整付取引も合わせて行うこととする。(半分を固定価格、半分を事後調整付として、固定価格取引において約定しなかった売札については、事後調整付取引に再投入する)
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