産業部門の中で最もCO2排出量の多い鉄鋼であるが、主に高級鋼の製鉄に用いられる現在の高炉法では、コークスを用いた還元反応によるCO2排出が不可避である。
また電炉法は、製造時のCO2排出量は少ないものの不純物の除去が難しいため、現時点、高級鋼生産は困難であるほか、鉄スクラップだけでは鋼材需要を賄いきれないといった課題が存在する。なお欧州では、高品位鉄鉱石を原料とした直接還元法+電炉+再エネ電力による「グリーンスチール」の供給を拡大する方向性が示されている。
このため、鉄鋼分野のCO2削減と競争力強化を両立するGX実現に向けて、コークスの代替として水素で還元する水素還元高炉の技術開発を進めるものの、これは2040年代の実装を想定した技術である。
そこで、まずは早期に実現可能な方策として、一部の高炉から電炉への転換を進めるとともに、直接水素還元などにより、日本でもグリーンスチールを2030年をめどに1,000万トン供給することで、グローバル市場での競争をリードしていく方針が示された。
GX投資促進策の適用を求める製鉄事業者は、自社やサプライチェーンでの排出削減のコミットメントやグリーンスチール供給量等を示した先行投資計画を国に提出し、国は専門家の意見を踏まえ、採択を判断することとする。また国は、採択後の計画の進捗について、事業者の経営層に対して、毎年フォローアップを行うものとする。
図3は、鉄鋼分野における先行投資計画の例であるが、他の産業分野でも「排出削減の観点」と「産業競争力強化」を組み合わせた、同様のフォーマットに基づいた先行投資計画を作成する(紙幅の都合上、他産業の計画は本稿での掲載を省略)。
また、鉄鋼分野の投資戦略ロードマップ(暫定版)は図4のとおりであり、今後10年程度において、官民投資額を3兆円以上、国内で約3,000万トンのCO2排出削減を目標としている。
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