企業の脱炭素投資はどう評価されるべき? 政府が「GX製品市場」の在り方を検討へGX(グリーントランスフォーメーション)投資の促進へ(2/4 ページ)

» 2023年11月21日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

GX製品市場規模の拡大に向けたアプローチ

 一般的に、企業が脱炭素製品の開発・市場投入・生産拡大を行うためには、追加的なコストが必要となるため、脱炭素投資を行うには、継続的な予見性を持った需要見込みが重要となる。

 これまでも、いわゆるグリーン製品市場の拡大のためには、官民によるグリーン購入が進められてきたが、GX製品においても初期需要の創出時点では、国などの公共部門による義務的な率先購入や、購入補助策が有効と考えられる。

 民間市場を含めた需要の拡大に伴い、GX製品への選好と対価の支払いが定着することにより、次第に脱炭素コストが内部化され、供給側では競争的市場が確立することが期待される。これにより、GX製品全体の拡大と需給バランスが実現し、初期の購入補助策等は縮小することが想定される。

図5.GX製品市場の創出に向けたイメージ 出典:GX製品市場に関する研究会

 研究会では、温室効果ガス(GHG)排出削減に寄与するインパクトの大きさや、グリーン化に伴う産業競争力の観点、国際的な規制や調達行動の動向の観点から、グリーン調達を推進すべき戦略領域を分析し、鉄鋼・化学品・輸送用機器・電気機器・電子デバイスを最重要領域と位置付けている。

 鉄鋼や化学等の素材産業では、多大なコストをかけて排出削減したGX製品であっても、その製品自体は従来製品に比べて機能や性状が変わらないことが想定されるため、特にGX価値の適切な評価と市場創出が求められる。

GX製品のサプライチェーンにおける付加価値

 研究会では、調達インセンティブ向上の観点から、GX製品(脱炭素製品)が購入者に対して与える付加価値の類型として、「1.企業のScope3削減」、「2.最終製品のCFP(カーボンフットプリント)削減」、「3.エシカル・プレミアム」、の3つに分類している。ここでエシカル・プレミアムとは、「脱炭素に対する倫理的な付加価値」として定義されている。

図6.GX製品(脱炭素製品)の類型化 出典:GX製品市場に関する研究会

 Scope3とは、企業が、自社で直接排出したGHG排出量(Scope1)と他社から購入したエネルギー由来の排出量(Scope2)以外の、自社の事業活動に関係する範囲に由来する排出量を指すものであり、主にサプライチェーン下流での自社製品の使用や廃棄に伴う間接排出となる。国際的に、Scope3を含めたサプライチェーン排出量の算定やその削減を、企業に対して求める動きが加速している。

 またCFPとは、製品のライフサイクル全体で排出したGHG排出量の総量を表すものであり、CFPを算定することにより、自社製品のライフサイクル上での主な排出源(ホットスポット)を把握することができると共に、グリーン製品として選択されるための指標となり得るものである。

 国際的に、企業が自社製品のライフサイクル排出量を算定・開示・削減する動きが進みつつあるほか、欧州では、バッテリー規則や炭素国境調整措置(CBAM)のように、多排出製品の排除という負のインセンティブを働かせる手段として、CFPを活用する事例も現れている。

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