水素と化石燃料の差額を支援する「値差支援制度」、価格面などの詳細案が明らかに水素・アンモニアサプライチェーンの構築支援策(3/4 ページ)

» 2023年11月24日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

値差支援制度の「基準価格」

 本制度において、事業者に対して支援される「値差」とは、「基準価格−参照価格」の数式で表される。原則は「CfD(Contract for Difference)」方式であるため、値差がマイナス値となった場合は、事業者から国に対して収益を返還することとなるが、本稿ではこのケースの説明は割愛する。

図3.値差支援制度の「基準価格」と「参照価格」 出典:水素・アンモニア政策小委員会

 ここで「基準価格」とは、供給者が需要家に販売する水素等について、日本着時点における水素等の製造・供給に要する総コストと妥当な水準の利益の和(単位量当たりの総コスト等)であり、本制度に応札する事業者自身が事前に算定し提示するものである。FIP制度の入札方式基準価格に類似する。

 基準価格は支援期間(原則15年)の間は原則固定であり、コストオーバーラン等のリスクについては事業者負担とする。他方、為替の変動や原料費等の変動の一部は、事業者の努力では回避困難(制御不能)であるため、事前に決めた算定式に基づき自動調整するものとする(図4の①)。

図4.基準価格算定内訳のイメージ 出典:水素・アンモニア政策小委員会

 また、現時点で定量化できないコスト増に備えるため、予備費を基準価格に一定程度計上することを認め(図4の②)、リスク要因が実際に顕在化しなかった場合、未使用の予備費の一部は基準価格の算定から控除する。

 基準価格算定式の詳細は図5のとおりであり、各要素(A1、A2、B)を定数として固定しつつ、海外製造の場合は為替変動の調整を認め、原料価格が一般的に公表されている指標に基づき変動する場合は、原料費等の変動に基づく調整を一部認めることとする。

図5.基準価格の算定式の考え方 出典:水素・アンモニア政策小委員会

 なお、支援に規律を持たせるため、基準価格には事前に上限値を設定するほか、支援期間中に革新的技術の実装を行うなどの合理的な理由によりコスト低減が見込まれる場合には、例外的に基準価格の見直し(価格低減)を事業者に求めることとする。ただし、これは事業者が技術革新を行うことをためらわせる要因となるため、慎重な制度設計が求められる。

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