水素と化石燃料の差額を支援する「値差支援制度」、価格面などの詳細案が明らかに水素・アンモニアサプライチェーンの構築支援策(4/4 ページ)

» 2023年11月24日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
前のページへ 1|2|3|4       

値差支援制度の「参照価格」

 「参照価格」は、水素等が代替する化石燃料・原料のパリティ価格(同じ熱量を得るために必要な燃料・原料の市場価格)を参照することが原則となる。

 黎明期においては、水素は主に天然ガスの代替燃料、アンモニアは主に石炭の代替燃料としての需要が見込まれているため、当面は原則、水素は天然ガス、アンモニアは石炭のパリティ価格(日本着時点。一般的に公表されている参照可能な指標)を基礎として、参照価格を設定する。既存化石燃料のパリティ価格(2022年9月時点)は、図6のとおりである。

図6.既存燃料のパリティ価格 出所:水素政策小委員会

 また、水素等は脱炭素という環境価値(CO2ゼロエミ価値)を持つ燃料であり、この環境価値は、水素等を購入することにより需要家が享受する便益となる。このため、環境価値分の価格は需要家が負担することが適切であり、水素等は既存化石燃料のパリティ価格よりも、環境価値に相当する分は高く取引されると想定される。

 よって参照価格は、代替される既存原燃料の日本着時点における価格に、環境価値を加算することが基本形となる。

 なお、本制度が既存の水素・アンモニア市場の取引に影響を与えないよう、既存用途に供給する場合には、当該用途ごとの過去販売価格等も考慮して参照価格を決定するなどの配慮が求められる。

図7.参照価格の設定例 出典:水素・アンモニア政策小委員会

 また、今後のカーボンニュートラル達成に向けては、本制度15年間の支援期間中に、炭素価格の上昇や新たな規制的措置が導入されることも想定される。このため、環境価値の顕在化や制度的措置の効果が適切に価格に反映されるような仕組みとしておく必要がある。

 以上を踏まえ、本制度における参照価格については、以下の3つのうち、いずれか高いものを参照価格として算定することとする。

  1. 代替される既存原燃料の日本着時点における価格+環境価値等
  2. 日本着時点における水素等の実販売価格
  3. 既存の水素・アンモニア市場での用途に用いる場合、その用途の取引実績に基づく価格

 また、国による支援総額を抑制する観点からは、事業者が自助努力により、水素等をより高く需要家に販売することが望ましい。類似する英国のLow Carbon Hydrogen Business Model制度では、参照価格を超えて高く販売した場合には、実際の販売価格と参照価格との差額の10%を、事業者にインセンティブとして支払う仕組みとしている。

 よって日本においても、2と1の差額の一部をインセンティブとして、水素等の供給事業者に還元することを今後検討する予定としている。

 水素等のサプライチェーンを構築するためには、製造・供給事業だけでなく需要面や流通も含めたコンビナート等のインフラ整備も必要とされる。このような拠点整備支援策についても、具体化が急がれる。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.