運輸部門の脱炭素化が求められる中で、その活用が期待されている水素。経済産業省が主催する「モビリティ水素官民協議会」では、このほど運輸部門における水素の利活用の方策などをまとめた中間とりまとめを公表した。
カーボンニュートラル社会の実現に向けては、運輸部門においても、脱炭素化が不可欠である。このため運輸部門ではEVが急速に普及しつつあるが、長距離の移動が求められる分野では、水素の活用、すなわちFCV(燃料電池自動車)の普及が期待されている。
また、IEAのNZEシナリオ(Net Zero Emissions by 2050)では、2050年時点において輸送部門(船舶や航空を含む)が、水素の最大の需要を占めると見込まれている。
しかしながら、運輸(モビリティ)分野での水素導入拡大には、FCVや水素燃料の供給量・コスト、ユーザーの利用方法に応じたインフラ整備等の多くの課題がある。
このため経済産業省は、官・民(供給側・需要側)で将来像を共有し、それに向けて必要な政策を議論するために、2022年に「モビリティ水素官民協議会」を立ち上げた。協議会では、計5回の会合での議論を経て、2023年7月にその中間とりまとめを公表した。
日本は世界で初めての「水素基本戦略」を2017年に策定し、グリーン成長戦略や第6次エネルギー基本計画等を踏まえ、2023年6月に水素基本戦略の改定を行った。改定水素基本戦略においては、水素(アンモニア等の水素換算量を含む)の導入目標として、発電・産業・運輸などの合計で、2030年に最大300万トン、2040年に1,200万トン程度、2050年に2,000万トン程度を掲げている。
また、水素コストについては、長期的には化石燃料と同等程度の水準を目指し、2030年に30円/Nm3、2050年に20円/Nm3以下(いずれもCIF)を目標としている(※ 水素1Nm3=0.0899kg)。
自動車分野においては、2030年までに乗用車換算でFCV 80万台程度(水素消費量8万トン/年程度)、水素ステーション1,000基程度の導入を目標としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.