燃料電池車と水素インフラの普及に必要な政策とは? 経産省が中間とりまとめを公表法制度・規制(2/4 ページ)

» 2023年07月21日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

足元の水素・FCV市場の動向

 FCVは現在、日本や米国では乗用車を中心に導入が進んでおり、日本国内におけるFCVの導入台数は7,755台である。水素ステーション数は181カ所と年々増加しているが、国内ガソリンスタンドの約28,000カ所と比べると、まだ1%に届かない。

 他方、中国では商用車(トラックや路線バス)を中心にFCVの導入が進んでおり、2021年末時点で累計9,000台程度が導入済みである。また、欧州のHyTrucksプロジェクトでは、2025年までに、合計1,000台のFCトラックを導入することを計画している。

 民間調査会社の試算によると、燃料電池システムの世界市場は2020年度に約3,278億円であり、2030年度には約4兆9,581億円に拡大すると見込まれており、その内訳は乗用車が42%、トラック・バスが約32%、定置用燃料電池が約19%となっている。

図3.2030年の燃料電池市場規模のイメージ 出典:モビリティ水素官民協議会

 なお、水素により発電を行う燃料電池(FC)と、電気により水を電気分解する水電解装置は、原則同じ構造の装置であり、目的に応じて逆方向の反応を利用する装置である。このため、トヨタFCV「MIRAI」のFCスタックの構成部品を流用して、水電解(水素製造)の技術実装も行われている。

図4.燃料電池(FC)と水電解のスタックの使い方 出典:トヨタ自動車

 世界的な燃料電池市場の拡大を見込み、トヨタ自動車に対しては、2030年時点で10万台/年程度の燃料電池の外販オファーが寄せられており、その大半が商用車である。トヨタでは、欧州、中国、北米の市場規模が大きいと予測している。

 なお、日本は燃料電池のセル技術・水素タンクの大型化技術関連で、諸外国と比較して特許数などで優位に立っている。一方で、近年の燃料電池のセルに関する特許出願数は中国が突出しており、今後の水素産業戦略が注視される。

FCVの有望なユースケース

 EVの技術開発が著しいため予断を許さないものの、FCVでは移動距離が長い商用車(トラック、バス、タクシー)や社用車としての市場導入が期待されている。

 具体的には、幹線輸送に用いられる大型トラックや、コンビニ配送などの稼働率が高い用途、冷蔵冷凍車・ミキサー車等の電気消費量が多い小型〜中型架装トラックでは、FCトラックが有望と考えられる。また、走行距離が定まっている大型路線バスなども有望なユースケースと考えられる。

表2.FCVの有望なユースケース 出典:モビリティ水素官民協議会

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