北海道苫小牧市では、日本初の大規模CCS実証試験として2016〜2018年度に合計約30万トンのCO2が、沖合約3km・深度1,000〜1,200mの海底下に貯留された。圧入が終了した現在も、貯留の安全性を担保するため、さまざまな手法(弾性波探査、微小振動観測など)を組み合わせて継続的なモニタリングを実施中である。
北海道では、2018年9月6日に胆振東部地震(マグニチュード6.7)が発生したため、学識経験者から構成された「苫小牧CCS実証試験に係わる課題検討会」において、小牧CCS実証試験への影響や地震との因果関係等について評価・検討が行われた。
その検討会報告書の結論としては、
というものである。
北海道胆振東部地震の震源は、貯留地点から水平距離で約30km離れており、震源はCO2貯留層と地層の連続性が無い別の地層内であることが確認された。また震源は深度37kmの地点であるのに対して、CO2貯留層は深度1〜3km(貯留の大半が1.0〜1.2km)と比較的浅い地点である。
検討会では、貯留層へのCO2圧入による周辺の地層圧力への影響を、シミュレーションにより確認を行った。この結果、圧力上昇が大きい滝ノ上層圧入井について、「累計圧入量750トン圧入終了、圧入圧力5MPa上昇」とした場合の圧力変化は、圧入井周辺では2MPa、圧入井から1km離れると0.25MPa以下となる。さらに、圧入井から30km離れた震源付近地点での応力変化は約1Pa程度と試算された。
地球の地殻は、潮汐力(月や太陽が地球の海水に潮の干満を発生させる力)による影響を常に受けており、その圧力は数kPa〜数十kPa程度である。つまり、CCSによる圧力変化の約1Paとは、潮汐力による圧力変化の1/1,000程度と極めて小さいため、CO2圧入による圧力変化が地震発生に影響するとは考えられない、と結論付けられた。
なお、地震による滝ノ上層への応力の増加は1.9kPa程度(潮汐力以下)と見積もられており、設備破損やCO2貯留層の異常はなく、CO2の漏洩は認められない。
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