脱炭素施策として期待のCO2回収貯留事業、その仕組みとリスク管理の在り方とは?エネルギー管理(1/4 ページ)

カーボンニュートラルの達成に向けた方策として導入検討が進んでいる「CCS(二酸化炭素回収・貯留)/CCU(二酸化炭素回収利用)事業」。カーボンマネジメント小委員会の第3回会合では、CCSによるCO2貯留メカニズムやリスクマネジメントの体系等が報告された。

» 2023年12月06日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラル実現のためには、最大限の省エネとエネルギーの脱炭素化を進めることを前提としつつ、それでもCO2の排出が避けられない分野においては、CCS(二酸化炭素回収貯留)やCCU(二酸化炭素回収利用)の利用が不可欠と考えられている。

 国は2023年3月に『CCS長期ロードマップ』を策定し、2050年時点で年間約1.2〜2.4億トンのCO2貯留を可能とすることを目安として、CCUS事業環境の整備を進めている。

 CCS実施のためには、その安全性等に関する地域住民の理解が不可欠である。このため、カーボンマネジメント小委員会の第3回会合では、CCSによるCO2貯留メカニズムやリスクマネジメントの体系等が報告された。

CCS・CO2地中貯留の仕組み

 われわれが生活する地上の環境は、1気圧(1.01bar≒0.1MPa)、平均気温15℃であるのに対して、地下1,000〜2,000mでは、圧力は100〜200bar、温度は50〜100℃となっている。

 CO2は、臨界温度・圧力が低いことが特徴であり、温度31.1℃、圧力7.38MPa(73.8bar)を超えると、容易に「超臨界状態」となる。

表1.温度・圧力によるCO2密度の変化 出典:JOGMEC

 超臨界状態のCO2は、「液体のような高い密度」と、「気体のような低粘度・高拡散性」を同時に有するため、表1の例の場合、地下では地上の289倍の量のCO2を効率的に貯留することが可能となる。

 また、CO2を地下に貯留するためには、CO2が超臨界状態となる深度800〜1000m以深の地下で、『CO2を貯めることができる貯留層』と『CO2の上部移動に対するフタとなる遮蔽層』がセットで存在する場所が必要となる。

図1.CO2貯留場を構成する地下地質 出典:JOGMEC

 「貯留層」では、十分な貯留容積と高い浸透性が求められるため、大きな隙間を有すること(砂粒粒子)が望ましく、「遮蔽層」ではCO2の移動を防ぐため、隙間は小さいこと(泥粒子)が望ましい。遮蔽層の隙間(孔隙)は10nm未満であり、10μm未満の貯留層と比べて約1,000倍の緻密さを持つ地質が選択される。

 圧入井を通じて貯留層に圧入されたCO2は、地下で物理的に、また科学的にトラップ(貯留)されることとなる。

 物理トラップの第1が「構造性トラップ」であり、緻密な遮蔽層による「お椀型」のフタにより、トラップされる。物理トラップの第2が「残留ガストラップ」であり、CO2が移動する過程で小さなバブル状になり、界面張力により岩石孔隙内に保持され、流動性を失い安定的に貯留される。

図2.貯留層内でのCO2貯留メカニズムの形態 出典:JOGMEC

 化学トラップの第1が「溶解トラップ」であり、圧入したCO2は地層水に溶け込むが、これは周囲の水よりも重く、沈下する方向で移動するため、地表への上方移動は起きず、安定的に貯留される。化学トラップの第2が「鉱物化トラップ」であり、CO2が溶解した地層水が岩石鉱物と化学反応を起こすことにより、最終的には岩石鉱物として安定的に固定される。

 物理トラップは比較的早く進行するのに対して、化学トラップは時間をかけてゆっくりと進行するため、年月が経つにつれてCO2貯留メカニズムの内訳は、図3のように変化することとなる。以上より、CO2の地中貯留は、圧入からの経過時間が長くなるほど、貯留は安定化へ向かうと考えられている。

図3.CO2貯留メカニズムの経時変化 出典:JOGMEC
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