「くらしGX」を実現へ――家庭・業務部門の省エネ・非化石転換政策の今後法制度・規制(3/4 ページ)

» 2023年12月12日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

蓄エネ型リソースの活用ポテンシャル

 改正省エネ法は、従来からの省エネに加え、非化石エネルギーへの転換や、デマンドレスポンス(DR)等の運用の高度化等をその目的に加えた法律である。

 家庭等におけるヒートポンプ給湯機や、EV、定置式蓄電池等の蓄エネ型リソースは、広義のデマンドレスポンスを行うことにより、調整力ΔkWや供給力kWとして活用することが期待されている。

 現時点の普及台数は蓄電池70万台、EV40万台と、まだ少ないことが課題の一つであるが、ヒートポンプ給湯機(エコキュート)は800万台、旧来型の電気温水器は400万程度、導入されていると推計される。

 東京大学生産技術研究所の岩船教授は、従来、夜間(早朝)に運転されていたエコキュート等を昼間に運転することにより、約2,100万kWの「上げ調整力」を生み出すポテンシャルがあることを報告している(消費電力はエコキュート1kW、電気温水器3kWとして推計)。これにより、再エネの出力制御率を低下させ、国の再エネ比率を上げることが可能となる。

 全国で1,590万台のエコキュート導入を想定する場合、2030年度時点の再エネ(太陽光+風力)の出力制御率は、エコキュート深夜運転(制御率5.8%)と比較して、エコキュート昼間運転(制御率4.4%)では、1.4ポイントの改善効果が得られるシミュレーション結果となっている。

表2.エコキュート等による「上げ調整力」創出ポテンシャル 出典:東京大学生産技術研究所

 現在、ヒートポンプ給湯機等では省エネ目標基準はあるものの、DRに向けた目標基準は策定されていない。また、実際にヒートポンプ給湯機等でDRを行うためには、製品自体やその製品規格をDR対応にすることや、需要家にDRインセンティブを与えるための電気料金メニューの整備などが必要となる。

 省エネ小委では、機器メーカーや小売電気事業者と共に、ヒートポンプ給湯機等の「DR ready」化に向けた制度のあり方について検討を進め、2024年中頃を目途に一定の結論を得る予定としている。

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