「同時市場」の導入後、調整力の区分や必要量はどう変わるか?エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2023年12月28日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

調整力商品区分の見直しの方向性

 同時市場への移行後は、前日市場以降もTSOがGCまで都度SCUCを実施することにより、GC以前の残余需要予測誤差に対応することとなる。

 図5右のようにSCUCを高頻度で実施することにより、GC時点の残余需要予測誤差を小さくできるが、SCUCの実施には高い計算能力を必要とする。このため、SCUCの計算負荷をなるべく低減し、計算時間を短縮するためには、調整力の商品を集約し、商品区分を減らすことが有効と考えられる。他方、調整力商品の集約については、新規参入の阻害とならないよう、一定の配慮も求められる。

図5.SCUCの頻度と残余需要予測誤差 出典:需給調整市場検討小委員会

二次調整力②と三次調整力①の集約の検討

 作業会では、調整力商品の集約について、機能や要件の近い商品から検討を行った。現行の二次調整力②と三次調整力①の要件を比較すると、差異は「応動時間」と「継続時間」のみである。このうち継続時間については、入札ブロックの30分化により、2026年度以降、その差異は解消される見込みである。

 残る応動時間については、より長い三次①に合わせることができれば、新規参入を阻害することはないと考えられる。

表2.二次調整力②と三次調整力①の差異 出典:需給調整市場検討小委員会

 他方、単純に二次②を廃止すると、これまで二次②が担ってきた事象(変化の速い段差)に対応できなくなり、周波数品質に悪影響を与えるおそれがある。

 この対策としては、幅広い要件の単一商品としながらも、約定したリソースのハイパフォーマンス部分(最低要件より高いスペックの部分)を上手く活用することが考えられる。このためには、早い応動時間のリソースに対してはより高い対価を支払うインセンティブを付与することが考えられ、今後、米国PJMの制度を参考にしながら、インセンティブ設計について検討を進める予定である。

図6.集約後の三次①のインセンティブ案 出典:需給調整市場検討小委員会

 その他の調整力商品区分については、応動時間以外に「指令・制御」の違いや、専用線構築の必要性の違い、商品の設計目的自体の違いなどがあることから、集約の可否について引き続き、作業会において検討が進められる予定である。

図7.調整力商品区分見直しの検討状況 出典:需給調整市場検討小委員会

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