新制度では、買い手はFIT証書の入札時に、価格や数量だけでなく、希望するトラッキング属性を提示する案が示されている。
トラッキング属性の希望の出し方については、「特定設備のトラッキング情報を指定する方法」と「一定条件(例:所在地や発電種別)を満たす設備のトラッキング情報を指定する方法」の2つが想定されている。
現時点の案では、買い手は、希望するトラッキング属性を第2希望まで指定できるが、トラッキング属性の希望を提示しないことも可能であり、その場合はランダムに任意のFIT設備に関するトラッキング情報が付与される。また、都道府県単位ではなく、より細かい粒度(市町村単位)での指定など、市場参加者の利便性の向上や取引の効率性確保の観点から検討を行う予定としている。
なお、これは入札であるため、仮に同一のトラッキング属性に対して、複数の買い入札が発生した場合は、入札価格の高い順に希望量を割り当てることが原則となる。
ここで問題となるのが、これまでのFIT証書属性情報の「優先割当ルール」との整合性である。
現行制度では、FIT電気の取引のタイプとして、図4のような3つの類型がある。そのうち以下の2つについては、小売電気事業者は市場を介さずに、特定のFIT電源から電気を調達することが可能である。
この「電気の取り引き」の流れにおいて、FIT電気そのものの属性情報と、環境価値(FIT証書)の属性情報(トラッキング情報)が異なる場合、小売事業者が需要家に再エネ価値を訴求する際に、無用な誤解や混乱を招くおそれがある。
このため、小売買取または特定卸供給の対象となっているFIT電源については、属性情報(トラッキング情報)が一致するように、当該小売買取義務者または特定卸供給者に対して優先的に属性情報を割り当てる仕組みである「優先割当ルール」が運用されている。
この結果、希望する小売事業者へ任意にトラッキング情報を割当可能な量は、現在、FIT証書全体の35%に留まっている。なお、発電事業者と小売事業者や需要家の間で個別合意を行った場合も、優先割当ルールの一類型として、特定のトラッキング情報を優先的に取得することが可能である。
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