非化石証書のトラッキング制度が見直しに、現状の課題と制度変更の方向性は?法制度・規制(3/4 ページ)

» 2024年01月10日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

FIT環境価値とその属性情報の帰属

 FIT制度開始当初から、FIT電気の持つ環境価値については、再エネ賦課金を支払う全ての需要家に帰属するものと整理されている。また、非化石証書制度の開始後は、FIT電気に限らず、電気そのものの価値と環境価値は分離されている。

 このため、再エネ特定卸供給契約や小売買取契約といった、FIT電気に関する電力販売契約が存在する場合であっても、これらの契約により小売電気事業者に移転するのは、FIT電源の「電気としての価値」のみである。

 つまり、環境価値やその環境価値に付随する属性情報(トラッキング情報)は、特定卸供給契約や小売買取契約があったとしても、当該小売事業者に移転するものではないが、「優先割当ルール」が存在することにより、非化石証書を購入することと同時に、ほぼ自動的にその属性情報を取得することが可能となっている。

 FIT証書の全量トラッキングが進む中で、特定の属性の環境価値へのニーズが高まっていることなどを踏まえ、FIT証書のトラッキングについても、市場を通じた最適配分を行うことが求められている。このため制度検討作業部会では、優先割当ルールの見直しや廃止に向けた検討を行った。

優先割当ルールの見直しに関するアンケート調査

 資源エネルギー庁では、FIT証書トラッキング制度における入札方法や優先割当ルールの見直しに関して、小売事業者や発電事業者等に対してアンケート調査を行った。

 なお、FITトラッキング付証書を調達している事業者のうち、約5割が再エネ特定卸供給契約による優先割当を利用、約2割が小売買取による優先割当を利用、約4割が個別合意による優先割当を利用している。

 アンケートでは、「現行の優先割当をなくし、割当を応札価格で決めるとした場合、どのようにお考えでしょうか?」という設問に対して、トラッキングを利用している事業者の大半が「問題あり」との回答であった。その理由としては、産地を特定した小売メニューの販売ができなくなる可能性や、優先割当が廃止された場合のコスト増への懸念等が挙げられている。

 また、仮に優先割当を廃止する場合の緩和策として、「一定の移行期間を設ける」案を支持する回答も一定数あるものの、あくまで優先割当の存置を望む声が多い結果となった。

図6.優先割当ルールの見直しに対する回答 出典:制度検討作業部会

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