大気中のCO2を直接吸収する「DAC」、日本での市場創出に向けた施策検討がスタートエネルギー管理(2/4 ページ)

» 2024年03月14日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

DAC・DACCSの概要とコスト試算

 DACとは大気中の希薄(420ppm程度)なCO2を回収する技術の総称であり、回収したCO2は地下貯留(DACCS)または燃料や化学品、セメント等に利用(DAC-U)することで除去される。

 CO2の回収方式には複数の技術があり、すでに商用化されている化学吸収や化学吸着のほかに、膜分離や電気化学を用いた手法が開発中である。

表1.DACのCO2回収技術例 出典:NEDO

 DAC設備そのものは設置場所の制約が無く、必要面積が比較的少ないため、回収したCO2を輸送せず貯留・固定等に便利な場所に設置が可能といった長所がある一方、その回収コストが大きな課題である。

 科学技術振興機構低炭素社会戦略センターの試算によれば、DACのコストは35,400円/t-CO2、DACCSとして36,700円/t-CO2と試算されている。大気中の希薄なCO2を回収するために多くのエネルギー(熱・電気)を消費するため、運用コスト及びCO2除去効果の観点から、エネルギー消費の削減が重要となる。

表2.DACコストの試算例 出典:低炭素社会戦略センター

 DAC・DACCSを、「1.TRL(技術成熟度レベル)」「2.除去コスト(2050年想定の中央値)」「3.除去ポテンシャル(2050年想定の中央値)」「4.研究開発力の国際比較」の観点から、他のNETsと比較したものが表3である。

表3.DACCSを含むNETsの比較 出典:ネガティブエミッション市場創出検討会

DACに関する諸外国の動向

 米国やEU等の諸外国では、官民の双方で、DAC等を含むNETsに対する取り組みや支援政策が進んでいる。米国は、CO2除去(CDR)の実施コストを100ドル/トン以下とする目標を表明しており、米国内における4つの「DAC Hub」設置に対して35億ドルの投資を行い、年間100万トン以上のCO2の回収・貯留・製品転換ポテンシャルのある技術を実証、商用化することを目指している。また、インフレ削減法案(IRA)において既存のCCSタックスクレジットを拡大し、DACに関する特別措置の追加により、1トン当たり最大180ドルが税額控除される。

図2.米国IRA法に基づく45Qクレジットの拡大 出典:ネガティブエミッション市場創出検討会

 民間企業では、スイスのClimeworks社がアイスランドにおいて年間4千トンのDACCSプラントを稼働中であり、2023年1月にはMicrosoft社等に対して、世界初の第三者認証済のCO2除去(CDR)を納入した。さらに同社では2024年に、年間3.6万トンのDACCSプラントを稼働予定としている。

 また、カナダのCarbon Engineering社は、2025年中頃に年間最大50万トンのDACCSプロジェクトを米国テキサス州において商業運転開始予定としている。

表4.民間企業によるDACプロジェクト例 出典:ネガティブエミッション市場創出検討会

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