大気中のCO2を直接吸収する「DAC」、日本での市場創出に向けた施策検討がスタートエネルギー管理(3/4 ページ)

» 2024年03月14日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

DAC市場創出に向けた国内カーボンクレジット制度の活用

 現時点、DAC・DACCSは直接的に経済的価値を生むものではないため、DACを行う企業等に対して、どのようなインセンティブを与えるかが課題となる。

 DACによるCO2除去に伴う環境価値をカーボンクレジットとして販売できれば、それがDACを行う事業者の収入となる。日本国内では、国(経済産業省・環境省・農林水産省)が運営するJ-クレジット制度があり、除去・吸収系の森林方法論に由来するクレジットでは15,000円/t-CO2程度で取引された実績があり(「カーボンクレジット市場」の実証結果)、DACについても相対的に高い単価で取引されることも考えられる。

表5.J-クレジットの方法論(大分類)毎の加重平均取引価格 出典:東京証券取引所

 ただし、CO2除去の取り組みを評価できるJ-クレジット方法論は、現時点、森林系の3つの方法論(森林経営活動、植林活動、再造林活動)と農業分野のバイオ炭方法論の計4つに限られている。これは、J-クレジット制度の対象は、「日本国温室効果ガスインベントリに計上される排出量の削減/吸収量の増大に資する取り組み」と定められているためであり、国家インベントリに未計上のDACCSはJ-クレジットの対象外とされている。

 そこで現在、国はDACCS等のCO2除去の取り組みを積極的に後押しする観点から、J-クレジット制度運営委員会において、規程類や方法論の整備を進めている。

 また、2023年度からGXリーグの排出量取引制度(GX-ETS)を開始したが、その第1フェーズ(2023〜2025年度)において、目標達成に活用可能なカーボンクレジットとして、J-クレジットやJCMのほかに、政策的重要性の高いクレジットを位置付けることを検討している。DACCSについても、現時点で国家インベントリに計上されないものの、将来的に日本のカーボンニュートラル実現に寄与するクレジットとして、品質等について一定の基準を設けたうえで活用可能とすることを検討中である。

図3.GX-ETSにおける除去・吸収系クレジットの位置づけ 出典:DACワーキンググループ

諸外国でのDACカーボンクレジットの動向

 現時点、諸外国でもDACに由来するクレジットを発行する公的な制度は無いものの、「CCS+initiative」等の国際団体や民間企業等が中心となり、独自のボランタリーカーボンクレジットの方法論作成やクレジット化が進んでいる。これらの方法論はいずれも、米国DOEが作成したLCAガイドライン「Best Practices for LCA of DACS」を参考に、算定方法を具体化することで作成されたものである。

表6.海外のDAC算定方法論の状況と概要 出典:DACワーキンググループ

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