クレジットの質などに対する批判を受け、複数の団体等において、クレジットの質の改善やクレジットの適切な活用(訴求)に向けたルール整備が進められている。
例えば、IC-VCM(Integrity Council for the Voluntary Carbon Market)では、「追加性」「透明性」「永続性」等の高品質なクレジットの要件を定める「Core Carbon Principles」を策定した。
また、VCMI(The Voluntary Carbon Market Integrity Initiative)は2023年6月に「Claims Code of Practice(訴求規約)」を公表し、企業等がクレジットを利用・訴求する際のガイダンスを提供している。同Claims Codeでは、SBTi基準での短期目標設定や2050年ネットゼロへの誓約等をクレジット使用の前提条件としている。その上で、クレジットは目標達成には使用不可として、目標達成上はカウントされないもの(beyond value chain mitigation:自社のスコープ1〜3の外の緩和)として取り扱うとしている。
日本のJ-クレジット制度によるクレジット認証量は累計936万t-CO2に上る(旧制度からの移行を含む)。地球温暖化対策計画では、2030年度のJ-クレジット累積認証量の目標を1500万t-CO2としている。
現在、J-クレジット認証量の半分強が、「太陽光発電設備の導入」方法論のプロジェクトから創出されており、より効率的にクレジットを創出するため、2023年度にIoT・ブロックチェーン技術を用いた実証実験が行われた。実証では、太陽光発電のモニタリングや検証を効率的に行えることが確認されたため、今後は他の方法論への適用拡大も視野に入れ、J-クレジット制度を改定する予定としている。
先述のとおり海外では、DACCS等のネガティブエミッション技術を用いた炭素吸収・除去に関するクレジット方法論の策定やプロジェクト登録が進んでいるが、J-クレジット制度においてCO2除去の取組を評価できる方法論は、現時点、森林系の3つの方法論(森林経営活動、植林活動、再造林活動)と農業分野のバイオ炭方法論の計4つに限られている。これは、J-クレジット制度の対象は、「日本国温室効果ガスインベントリに計上される排出量の削減/吸収量の増大に資する取り組み」と定められているためである。
そこで現在、国はネガティブエミッション技術を活用した除去をJ-クレジット制度の対象とするため、J-クレジット制度運営委員会において、規程類や方法論の改定・整備を進めている。
ネガティブエミッション技術に由来するJ-クレジットについては、GXリーグでの活用を皮切りに、温対法の算定報告公表制度での活用についても検討を行う予定としている。
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