カーボン・クレジット制度の国内外の動向、クレジットの質・訴求方法は一層厳格に法制度・規制(1/4 ページ)

経済産業省はカーボン・クレジット制度に関する検討回を開催し、急速に変化するカーボン・クレジットを巡る国内外の動向に関して議論が行われた。

» 2024年03月25日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 社会全体のカーボンニュートラルを迅速かつ費用効率的に達成するためには、炭素の削減・除去価値を取引するカーボン・クレジットの活用が重要となる。

 このため、経済産業省は「カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会」における検討を踏まえ、多様なカーボン・クレジットの意義・活用方法等を整理した「カーボン・クレジット・レポート」を2022年6月に取りまとめた。

 経産省は同検討会を1年ぶりに開催し、急速に変化するカーボン・クレジットを巡る国内外の動向に関して議論が行われた。本稿ではカーボン・クレジットをクレジットと略すこととする。

カーボン・クレジットに関する国際的な動向

 世界にはさまざまなボランタリークレジット制度が存在するが、その取引規模等から、「Verified Carbon Standard (VCS)」「Gold Standard(GS)」「American Carbon Registry(ACR)」「Climate Action Reserve (CAR)」の4つが代表的な制度とされている。

 これらの主要4制度に基づくクレジット発行量は2017年から急増してきたが、2022年以降の発行量は減少傾向となった(図1左)。これは、クレジットの質や使い方(訴求)に関する批判や、それに対応するための制度側でのルール整備・改正等が途上であり、一部の買い手に買い控えが生じていることが一因と考えられている。

図1.主要クレジットの制度別・種類別発行量 出典:みずほリサーチ&テクノロジーズ

 また、クレジットを種類別に見ると(図1右)、再エネや森林・土地に関するクレジットが多いが、2022年以降はこれらのクレジットの発行量も減少傾向である。これは、グリーンウォッシュ批判や再エネプロジェクトの追加性に対する厳しい見方が影響していると考えられる。

 近年、これらのボランタリークレジット制度では、DACCS(大気中CO2直接回収貯留)やBECCS(バイオマス燃料CCS)等のネガティブエミッション技術に関係する方法論の策定が急速に進められているが、現時点の登録プロジェクト件数はまだわずかである。

 カーボン・クレジットは、相対取引のほか取引所取引も盛んであり、米国Xpansiv社が運営するCBL-Marketの総取引量(2020〜2023年)は3億トンを超え、世界最大の規模である。ただし、同取引所の取引量は2022年以降減少傾向にあり、取引価格も下落傾向にある。

図2.Xpansiv社CBL-Marketの取引量と取引価格 出典:みずほリサーチ&テクノロジーズ
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.