ICAO(国際民間航空機関)は2020年以降に温室効果ガスの総排出量を増加させない目標のもと、市場メカニズムを活用したCO2削減スキーム「CORSIA」を2016年に採択した。対象となる航空会社は一定量のクレジット購入・償却が義務付けられており、CORSIAに使用できるクレジットは「CORSIA適格排出ユニット」として規定されている。
日本政府は、J-クレジットをCORSIA適格排出ユニットとして認定するようICAOに申請したが、2022年・2023年のいずれも「要再申請」と判定され、認定には至らなかった。
国は不整合部分への対応を行い、次回申請では4方法論程度に絞って申請予定としている。(2023年は56方法論を申請)
国は、2025年を目途にJCMのパートナー国を世界全体で30カ国程度へ拡大することや、2030年までに累計で1億t-CO2程度の排出削減・吸収量を確保することを目標としている。現時点、JCMのパートナー国は29か国、既存プロジェクトによる累積削減量は約2,300万t-CO2に上る。
今後、JCMの実施体制を強化するため、JCMクレジットの発行、管理等を行うことができる指定法人制度を創設する予定である。
また、パリ協定6条に沿った「質の高い炭素市場(high integrity carbon markets)」の早期かつ着実な構築に向けて、2022年11月のCOP27にて「パリ協定6条実施パートナーシップ」が立ち上げられた。この実施機関として6条実施能力構築支援に向けて、2023年4月に「6条実施パートナーシップセンター」が設立された。
カーボン・クレジットの流動性を高め、価格を公示するための取引プラットフォームとして、東京証券取引所は2023年10月に「カーボン・クレジット市場」を開設した。現時点、取引対象はJ-クレジットのみである。
市場開設以来、現在までに265者が取引参加者として登録し、約20万トン、総額5.3億円が取引された(2022年度の実証では取引参加者183者、取引高は約15万トン、総額3.3億円)。
クレジット種類別の約定価格や約定量は表4のとおりである。
カーボン・クレジット市場の流動性を高めるため、東証は2023年11月よりマーケットメイカー制度を試験的に導入した。マーケットメイカーはあらかじめ定められた時間帯に、一定の価格帯の範囲内で、一定量の売り買い注文を同時に出す気配提示義務を負っている。
マーケットメイカー制度の導入により、それ以前と比べ、1日あたりの平均取引量が省エネクレジットでは2.4倍、再エネクレジットでは6.1倍に増加した。また、いずれのクレジットも取引価格の分散が小さくなる等、流動性の向上・取引価格の安定化の効果がみられた。
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