「需給調整市場」の約定量不足や価格高騰の原因は――エリア・商品別に見る足元の状況第91回「電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会」(3/4 ページ)

» 2024年05月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

全商品調達開始以降の約定価格

 昨年度までの調整力約定量不足を踏まえ、約定価格の高騰を抑制する対策として、三次②を除く4つの単一商品及び全ての複合商品では、上限価格が設定されている。具体的には、二次②・三次①の単一商品は14.42円/ΔkW・h、複合商品及び一次・二次①の単一商品は39.02円/ΔkW・hである。三次②には上限価格は設定されていない。

 4月以降の、エリア別・商品別の平均約定価格は図6のとおりである。上限価格が高い高速商品(一次・二次①)の約定価格が必ずしも高いとは限らず、三次②の約定価格がエリア内で最高値となるケース、その逆に最安値となるケースなど様々であり、エリアによって傾向が異なることが明らかとなった。

図6.調整力商品別の平均約定価格(4月1日〜14日) 出典:制度検討作業部会

 また、一つのエリア内でも、ブロック(時間帯)により約定価格は大きく異なり、例えば北海道エリアの4月の三次②の平均単価は、B7(18時〜21時)では138.9円/ΔkW・30分であるのに対して、B8(21時〜24時)では1.0円/ΔkW・30分である。

 各商品のリソース別平均約定価格は表1のとおりである。一次や複合商品において、蓄電池リソースの平均約定価格は上限価格に近いものであり、リソース間の競争が不十分であるため、上限に張り付く状態が生じていると考えられる。

 また、上限価格の設定がない三次②においては、蓄電池やDRリソースの約定価格の高騰や、一部火力の高額化が見られる。

表1.調整力商品別・リソース別の平均約定価格(4月1日〜14日) 出典:制度検討作業部会

 以上の調達量と約定価格から、現時点(4月1日〜14日)における調達費用総額は表2のとおりである。週間商品(一次〜三次①)は上限価格設定によって調達費用総額が抑制されているのに対して、前日商品(三次②)の調達費用がすでに多額となったエリアが複数存在する。特に東京エリアでは、わずか2週間で2023年度総額の30%に相当する費用となっており、危機的な水準と言える。

表2.現時点(4月1日〜14日)における調達費用総額 出典:制度検討作業部会を基に筆者作成

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.