日本は現在、脱炭素化への各種施策に取り組み、電力供給における構造転換は進みつつある。一方で電力需要は、人口減少や節電・省エネなどにより減少傾向にあったものの、今後は増加傾向に転じると想定されている(電力広域的運営推進機関が推計し2024年1月24日に公表)。
資源エネルギー庁では、国内の電力需要の増加は、ロボットやAIなどによる省人化・無人化・遠隔化に加え、各分野で電化・デジタル化が進んでいくことに起因すると分析。とりわけ、デジタル社会を支える重要な基盤となるデータセンターや半導体工場の新増設により、産業部門の電力需要が引き上げられると指摘する。これにどう対応していくかが、第7次エネルギー基本計画の新たな課題となる。
AI・データセンターによる計算能力拡大と、その計算能力を生かした産業活動のデジタル制御など、DX(デジタルトランスフォーメーション)の前提としても、脱炭素電力の供給拡大が不可欠とされる。
脱炭素電源のうち再エネについては、地域との共生や、関連技術の特定国への依存といった顕在化する懸念に応えつつ、引き続き主力電源化への取り組みを進めていくとする。とくに次世代型太陽電池(ペロブスカイト)や浮体式洋上風力の社会実装化など、日本の技術による発展が期待される分野への取り組みを強化する。
再エネと並んで脱炭素電源と位置づけられる原子力については、容量・価格両面で重要であり、再稼働を着実に進めていくことが急務であると強調。さらに、次世代革新炉への建替えを具体化していくことも必要であるとした。現行の第6次エネルギー基本計画は、「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」とする一方、「再生可能エネルギーの拡大を図るなかで、可能な限り原発依存度を低減する」とも明記している。今回の資源エネルギー庁のプレゼンは、現行計画の足枷を外し、原発依存度を高める方向に転換していく姿勢を示すものとなった。
第7次エネルギー基本計画の具体的な中身については、次回以降に議論されることになるが、エネルギー安全保障と脱炭素の両立が求められるなかにあって、将来の電源構成(エネルギーミックス)をどのように設定するかには大きな注目が集まる。新計画は2024年中に取りまとめられ、パブリックコメントを経て、閣議決定される見通しだ。
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