2018年から非化石証書制度とその証書取引が開始され、2020年4月からは、非化石電源由来の全ての電気について、電気そのものとその電気が有する環境価値が分離され、環境価値は証書化されることとなった。
非化石証書が発行された後の非化石電源由来電気は、一旦すべて、環境価値を持たない、いわゆる「抜け殻電気」となる。この「抜け殻電気」のCO2排出係数は全国平均排出係数である。
他方、先述のとおり、現行のSHK制度において基礎排出量(排出係数)とは、発電で用いた化石燃料燃焼に伴うCO2排出量を算定するものであるため、FIT再エネ電気はCO2排出量(排出係数)ゼロと扱われている。
本来、環境価値を持たないはずの「抜け殻電気」が、CO2ゼロエミ価値を持つかのように表現されることが、費用負担と得られる排出削減効果の間に齟齬(そご)を招いていると問題視されてきた。
そこで、環境省と経済産業省が共同事務局を務める「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会」では、「新たな基礎排出係数」を創出するとともに、従来の排出係数の利用についても見直しを行うこととした。同時にこれら排出係数の名称の見直しも行ったが、これについては後述する。
今回創出された新たな排出係数は、非化石証書やグリーン電力証書、J-クレジット(再エネ電力由来)の取引を反映させながらも、あくまで「基礎排出係数」であることが最大のポイントである。
「新基礎排出係数(仮称)」の創出により、調整後排出係数だけでなく基礎排出係数のレベルでも、需要家による小売電気事業者/電力メニューの選択による排出削減効果を反映することが可能となる。
また従来の調整後排出係数と同様に、小売電気事業者はメニュー別に非化石証書等の充当量を調整することが可能となるため、1つの小売電気事業者が複数の基礎排出係数(メニュー別基礎排出係数)を持つこととなる。
なお環境価値は、電気の由来・属性を示す「証書」と、他者の削減努力によりベースラインからの差分として生み出された「クレジット」に大別されるが、「新基礎排出係数(仮称)」ではこの両方が使用可能な仕組みとなっている。オフセットに使用されるクレジットが基礎排出量に適用可能な点は違和感もあるが、これは、CDP・SBTi・RE100などの国際的なイニシアティブにおいて再エネ電気由来クレジットも活用可能としていることに整合させたものと考えられる。
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