電気の排出係数が3つに増えることによる、需要家の混乱や誤認を招かないために、既存の排出係数を含めて、適切な名称に整理することが必要となる。
まず、従来の基礎排出係数は、小売電気事業者が調達した電源構成に基づき、環境価値の取引を反映していない排出係数であることから、「未調整排出係数」に名称変更する。
これは、小売電気事業者が他の小売電気事業者から電気を調達(卸供給)した場合や、全国平均係数を算定するために必要な排出係数であるが、需要家は使用しない係数となる。
今回新設された排出係数の名称は、「基礎排出係数(非化石電源調整済)」となり、名称だけでなく実質的にも、需要家は今後これを基礎排出係数として使用する。従来の基礎排出係数(基礎排出量)が、物理的な燃料燃焼と一致していたのに対して、今後は「環境価値面での一致」を図るという大きな方針転換となる。
従来の「調整後排出係数」は、名称及び使用方法に変更はない。今回の制度変更により、小売電気事業者は非化石証書等の利用により基礎排出係数「0」の料金メニューを設定することが可能となり、この場合、調整後排出係数も同時に「0」となるため、調整後排出係数そのものの必要性・訴求力が低下することや、ここで用いられてきたJ-クレジット(省エネ・森林吸収)やJCMクレジットへのニーズが低下することなどの変化が生じることも考えられる。
SHK制度においてエネルギー起源CO2基礎排出量の算定は、「燃料の使用」、「他人から供給された電気の使用」、「他人から供給された熱の使用」が対象である。よって、電気の排出係数の算定方法の見直しに伴い、熱供給事業についても、従来の「基礎排出係数」及び「調整後排出係数」に加え、新たな基礎排出係数を設けることとした。
熱供給事業における新基礎排出係数では、グリーン熱証書及びJ-クレジット(再エネ熱由来)の取引を反映可能とする。名称についても、電気と同じく「未調整排出係数」、「基礎排出係数(非化石熱調整済)」、「調整後排出係数」と変更される予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10