出力が変動する再エネ電源の大量導入に伴い、電力系統の安定化に必要な「調整力(ΔkW)」の確保が重要となっている。政府ではこの調整力にFIP電源等を活用する検討を開始し、このほどその課題整理や技術・制度面での検討が行われた。
太陽光発電や風力など、将来的な変動性再エネの大量導入に伴い、調整力(ΔkW)の必要量が増加すると想定されている。これまで調整力は主に火力電源や揚水発電等が供給してきたが、今後はDRや蓄電池、さらには変動性再エネ自体も調整力として活用することが期待されている。
変動性再エネには、FIT電源・FIP電源・非FIT/FIP電源があるが、インバランスリスクが無く市場価格に関係なく出力されるFIT特例①・FIT特例③と、インバランスリスクがあるFIT特例②・FIP・非FIT/FIPに大別される。
なお、すでにFIP・非FIT/FIP電源(以下、「FIP電源等」)は、需給調整市場のリクワイアメントを満たすことが出来れば、現時点においても調整力として活用することは可能である。電力広域的運営推進機関の需給調整市場検討小委員会では、変動性再エネ(FIP電源等)を調整力として活用することの課題等について、技術・制度面から検討が行われた。
火力や揚水等の安定電源は発電出力の制御が可能であるため、事業者は定格出力と最低出力の範囲内で発電計画を作成する。これらの安定電源が調整力を供出する際は、発電計画値〜定格出力の範囲で上げ調整力を、発電計画値〜最低出力の範囲で下げ調整力を、確実に供出することが可能である(設備トラブル時等を除く)。
他方、変動性再エネ電源は、正確な発電計画の作成が困難であり、実需給断面の天候により出力上限が変動するため、調整力として供出できる量も時々刻々と変動し、調整力供出の確実性の観点で劣後することとなる。
この課題に対して、天候に基づく出力予測値をそのまま発電計画値とするのではなく、図2のようにあらかじめ少し発電計画値を下げておくことにより、上げ調整力ΔkWを供出するという方法も考えられる(※ここではFIP電源等を想定しているので、計画値同時同量に基づき、インバランス回避のため、発電計画値=実際の出力とするよう努めることを前提としている)。
ただし、ΔkWを供出するために自ら出力抑制することは、本来、スポット市場等で得られたはずのkWh収益を放棄することとなり、「逸失利益」が発生することとなる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.