国内で導入が広がった太陽光発電。将来、大量に発生する廃棄設備の適切なリユース・リサイクルの実現が大きな課題となっている。そこで環境省や経産省では新たな委員会を設置し、実効性のある適切なリサイクル制度の創出に向けた検討を開始した。
FIT制度開始以降、太陽光発電の導入が進み、2024年3月末時点、住宅用(10kW未満)では336万件・1,536万kW、事業用(10kW以上)では71万件・5,787万kWが導入されている。
これらの太陽光発電所は一定期間後に稼働停止し、最終的には設備が廃棄されることとなる。環境省が一定の前提条件を基に試算したところ、太陽光パネルの推計排出量は2030年代半ばから増加し、最大50万t/年程度に達する見込みである。これは2021年度の最終処分量869万トン/年の約5%に相当する規模であり、現在の自動車リサイクル法の自動車シュレッダーダスト約46万tや、家電リサイクル法の再商品化等処理重量約57万tに匹敵する規模である。
太陽光発電設備の廃棄処理の責任は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃掃法)に基づき、排出者(太陽光発電事業者、解体事業者等)にあり、廃掃法に則り、適正処理することが求められるが、現時点、廃棄された太陽電池モジュールに対して法的なリサイクル義務はない状態である。
8月に策定された「第五次循環型社会形成推進基本計画」では、太陽光発電設備の「リユースやリサイクルを促進・円滑化するために、義務的リサイクル制度の活用を含め、引渡し及び引取りが確実に実施されるための新たな仕組みの構築に向けて検討を進めていく」としており、国は太陽光パネルのリサイクル促進のための政策パッケージを年内に取りまとめる予定としている。
このため環境省は「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」、資源エネルギー庁は「太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」を新たに設置し、その第1回合同会議が9月13日に開催された。
太陽電池には多くの種類があるが、現時点その95%がシリコン系であり、長期間屋外で使用することを前提に、ガラス・太陽電池セル・バックシートが封止剤によって堅固に貼り合わされた複層構造となっている。
太陽電池モジュールにはさまざまな化学物質が使用されており、適正処理のためには、それらの情報が確実に廃棄物処理業者に提供されることが必要である。よって、太陽光発電協会は 「使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供のガイドライン」を策定し、廃棄時に環境負荷が懸念される4つの化学物質(鉛、カドミウム、ヒ素、セレン)の含有率情報について、モジュール製造事業者等がHP等で情報提供するよう求めてきた。
また、2024年4月の再エネ特措法施行規則改正により、FIT/FIP制度において、新規認定申請する場合や既認定事業者が太陽電池モジュールの変更を申請する場合には、含有物質情報の登録がある型式の太陽電池モジュールの使用を義務付けることとした。
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