国内で大量導入が進んだ太陽光発電。将来発生する廃棄設備のリユース・リサイクルの仕組み作りが喫緊の課題となっている。本稿ではその制度設計を目的に設置された「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」の第2〜4回で検討された内容についてまとめた。
FIT開始後に大量に導入された太陽光発電設備は、やがて稼働を停止し、2040年代前半には太陽光パネル(太陽電池モジュール)の排出量は最大50万t/年にのぼると推計されている。
使用済み太陽光パネルは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃掃法)に基づき、排出者(太陽光発電事業者、解体事業者等)が適正に処理することが求められるが、現時点、リサイクルは義務付けられていない。このため国は、義務的リサイクル制度の創設など、太陽光パネルリサイクル促進のための政策パッケージの年内取りまとめに向けて、検討を進めている。
太陽光発電設備は太陽光パネルのほか、PCSや基礎等の様々な部材から構成されている。このうちPCSについては有価物として取引が行われており、架台や基礎等は建設リサイクル法等により、すでにリサイクル(再資源化)が行われている。このため、新たな制度におけるリサイクル義務の対象は、太陽光パネルに限定することとした。
太陽光パネルを構成するアルミフレームは、そのままマテリアルリサイクルが可能であり、バックシートに含まれている銀や銅は精錬により抽出することが可能である。プラスチック(EVA)は、現時点、経済的なマテリアルリサイクルが困難であるため、燃料としてサーマルリサイクル(熱回収)されている。
太陽光パネル重量の約6割を占めるガラスの多くは、路盤材やグラスウール等へとリサイクルされている。これらの製品用途はガラス品質面での制約が少ないというメリットがあるものの、これら製品へのリサイクルは1回のみ可能(ワンウェイ)であるほか、将来的な太陽光パネル排出量と比べて再生ガラスの利用量が少ないという課題がある。
このため、半永久的に何度もリサイクル可能である「板ガラス」へのリサイクルが求められている。この実現のためには、技術開発のほか、板ガラス原料に適した品質の廃ガラスを安定的に供給する仕組みの構築が必要となる。
ガラスやプラスチック等の再生資源をより付加価値の高い用途で使用することにより、リサイクルプロセス全体の経済性を向上させることが期待されている。
なお、リサイクル義務化の対象を制度面から見ると、FIT/FIP制度対象設備だけでなく、今後も導入の増加が見込まれる非FIT/FIP設備も対象とする。また今後の新設だけでなく、既設も含め、原則全ての太陽光パネルをリサイクル義務化の対象とする。ただし、太陽光パネルの種類や設置形態等に応じて、規律の強度を検討する予定としている。
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