カーボンファーミングの日本市場、2030年度に92億円規模に

大気中のCO2を土壌に固定することで、温室効果ガスの削減を図る「カーボンファーミング」。農業分野の脱炭素施策として注目を集めている。矢野経済研究所がこうしたカーボンファーミングに関する市場予測の調査結果を公表した。

» 2024年12月10日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 矢野経済研究所は2024年12月5日、大気中のCO2を土壌に取り込みむことで温室効果ガス(GHG)の排出削減を目指す「カーボンファーミング」に関する市場予測結果を公表した。調査はJークレジット制度における農業分野のうち、「バイオ炭の農地施用」「水田クレジット(水稲栽培における中干し期間の延長)」「酪農クレジット(家畜排せつ物管理方法の変更、牛・豚・ブロイラーへのアミノ酸バランス改善飼料の給餌、肉用牛へのバイパスアミノ酸の給餌)」を対象とした。

 日本のGHG排出量(2022年度)は二酸化炭素換算で11億3500万tであり、農林水産省によるとこの内、農林水産分野は4,790万tで全排出量の4.2%を占めている。農業分野からの排出について、水田や家畜の消化管内発酵、家畜排せつ物管理等によるメタンの排出等が主な要因となっている。

 その削減に向けては、土壌の質を向上させ温室効果ガスの排出削減を目指すカーボンファーミング(炭素貯留農業)やバイオ炭をはじめ、農地の土壌を健康に保ち、自然環境の回復につなげることを目指す環境再生型農業が国内外で注目されている。

 2024年度のカーボンファーミングの国内市場規模(オフセット・プロバイダーから生産者・生産団体に支払われた金額ベース)は3億9600万円と予測した。その後、2025年度までカーボンファーミングの国内市場は「水稲栽培による中干し期間の延長」プロジェクトがけん引し、2026年度以降は「バイオ炭の農地施用」が拡大する見通し。温室効果ガスの排出削減を目指す環境再生型の農業への取組みは今後も継続され、2029年度には50億円を突破し、2030年度のカーボンファーミング市場規模は92億2100万円に拡大すると予測している。

カーボンファーミングの国内市場予測 出典:矢野経済研究所

 なおカーボンファーミングは2023年3月に「水稲栽培における中干し期間の延長」がJ−クレジット制度運営委員会において、同制度における新たな方法論として承認された。しかしJ−クレジットに登録する際には、「100t以上のCO2削減・吸収見込み」を満たす必要がある他、登録やクレジット発行費用に数百万円が必要など、生産者単独で行うのはハードルが高い。

 そこで2023年4月に日本国内で水田由来のJ−クレジット創出を目的に、参加者を募りまとめて申請、登録する「稲作コンソーシアム」が発足。稲作コンソーシアムが参加者(=生産者)の水田をまとめてJ−クレジットに登録・申請するため、登録における「100t以上のCO2削減・吸収見込み」の条件を容易に満たすことが可能になるという。

 同コンソーシアムには、農家・農業法人だけでなく事業会社も参画しており、2024年5月時点で約300社以上と連携。大手農業メーカー、大手商社、地方銀行、大手コンサルティング会社、大手テック系企業、農業系ベンチャー、JA農業協同組合、営農支援ツール会社などが参画している。

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