2024年11月に公表された「中間取りまとめ」では、同時市場における入札や約定、精算の在り方に関する主な論点が整理されたが、同時市場の具体化に向けてはまだ検討すべき論点が多く残されている。
同時市場は、短期的な取り引きの最適化などさまざまなメリットを持つ仕組みであるが、電力の安定供給確保のためには、電源の設備投資や燃料調達といった中長期的な取引との整合性や予見性も重要である。発電事業者からは、Three-Part Offerの導入等により約定結果の見通しが立てにくくなり、発電事業の予見性が低下するおそれが指摘されている。
このため検討会では、発電BGは、「自己計画電源」(自ら起動を確定させる電源)として入札することを選択可能として、出力容量の上限・下限を任意に設定できることとした。これにより発電BGは、自らの発電計画に基づく運転が可能となる。
ただし、相場操縦等の防止の観点からの取引規律、監視の在り方や、需給逼迫など緊急時の一般送配電事業者による電源運用など、例外的な自己計画電源の制限については引き続き検討が必要である。
また、SCUC・SCEDにより電源の起動停止・出力配分を行うためには、Three-Part情報に加え、電源の起動時間や出力容量上下限、起動回数制約、運転時間制約等の詳細な運転パラメータを事前に登録する必要がある。ただし、実際の電源の運転は、設備面で決まる運転パラメータだけでなく、発電所の人員の対応可否(特に夜間や実需給直前等)にも左右されるものである。よって、相場操縦防止等の観点は踏まえつつも、運転パラメータの設定には事業者の一定の裁量を認めることも考えられる。
検討会では、まずは発電事業者による電源の売り入札について重点的に検討が行われてきたが、現行制度の卸電力取引所でも、小売電気事業者が相対契約で調達した電力を売り入札するケースが多くみられる。また、発電事業者による買い入札も一般的である。このため同時市場においても、小売事業者による売り入札方法等についても具体的な検討が必要となる。
これまでの検討により、一般送配電事業者(TSO)による想定需要は、小売電気事業者による想定需要よりも相対的に精度が高いことが分かっている。よって、前日市場約定の時点で小売入札需要よりもTSO想定需要の方が大きい場合には、確実な電源起動を確保する観点から、TSO想定需要を基準として電源起動を行うものと整理されている。
TSO想定需要によって追加起動されたこの電源を「ΔkW-I」と呼んでいるが、現行の需給調整市場における調整力ΔkWとは別物であり、「予備力」に近い位置付けとされている。
今後、このΔkW-Iの確保の仕方(出力配分するか、並列指示のみとするか等)やΔkW-Iとして調達された電源の運転費用の回収方法について検討を行う必要がある。
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