企業における温室効果ガスの排出量の算定や報告のルールを定めている「SHK制度」。政府は同制度で算定報告を行う場合、これまでクレジット化が必要だった森林吸収量などによるCO2削減量を、より直接的に「調整後排出量」に組み入れられるよう制度を改定する方針だ。
2050年カーボンニュートラル実現に向けては、最大限の排出削減と同時に、自然プロセスや工学プロセスを用いたCO2吸収・除去の活用が不可欠と考えられており、国の地球温暖化対策計画では、森林等による吸収量を2030年度に4,774万t-CO2、2040年度に8,424万t-CO2と見込んでいる。
温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)に基づく「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」(SHK制度)では、GHGを一定量以上排出する事業者(特定排出者)に対して、自らの排出量の算定と国への報告を義務付けている。2022年度の報告13,379事業者による合計排出量5.9億t-CO2は、国全体の排出量の5割強をカバーしている。
ただし、現在のSHK制度では、排出量のみが義務的な算定・報告事項であり、森林吸収量や炭素貯蔵量は任意報告に留まり、統一的な算定方法は規定されていない。森林吸収量はJ-クレジット化された場合のみ、「調整後排出量」の報告に活用可能である。
森林吸収量や木材製品の炭素蓄積量を「調整後排出量」として算定報告できるようになれば、より積極的な吸収・炭素固定の取り組みが進み、生物多様性保全や水源涵養(かんよう)などのコベネフィットの増進も期待される。
このため、「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会」ではSHK制度における森林吸収等の扱いについて検討が行われ、その第10回会合では「中間とりまとめ」が公表された。
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