SHK制度の「排出量調整」、森林吸収量や建築物炭素蓄積量を反映可能に第10回「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会」(5/6 ページ)

» 2025年06月19日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

木材製品の炭素蓄積変化量の算定方法

 木材製品は生きた樹木とは異なり、算定期間中に炭素蓄積の増減が生じないため、インフロー(新築・増改築・取得した物件中の炭素蓄積量)とアウトフロー(解体・譲渡した物件中の炭素蓄積量)の管理を行えばよいと考えられる。

 例えば、更地に木造建築物を新築する場合、利用した木材の量をもとに、「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」(林野庁)に基づき把握した炭素貯蔵量からインフローを算定する。

 特定排出者は、自社ビル等の建築物やオフィス家具等の木材製品を多数所有していることが想定され、これらのすべてを報告必須とすることは事業者の負担が大きいため、算定対象を任意に選択できるものとする。ただし、一度報告することを選択した木材製品は、その後の継続的な報告が義務付けられる。

「反転」(炭素貯蔵量の喪失)の取り扱い

 改正SHK制度では、特定排出者が森林や木材製品を適切に管理することを前提に、当該特定排出者の吸収量・炭素蓄積変化量として報告することを認めている。

 よって、他社への譲渡等により、森林等が活動境界から外れた場合には、保守的に、その時点において固定されていた炭素がCO2として大気中に放出したとみなされる。これを「反転」と呼び、特定排出者は、過去に報告した純吸収の合計と同量を、排出量として計上する必要がある。

 なお、森林を譲渡された特定排出者は、譲渡者(特定排出者)が炭素貯蔵量の喪失として計上した排出量を、譲渡時点で吸収量として報告可能である。木材製品でも同様に、譲渡者は、譲渡の時点で全量をアウトフローとして算定し、譲渡された者は同量をインフローとして算定する。

図6.森林の「反転」の取り扱い 出典:SHK制度算定方法検討会

森林吸収量等の算定報告の頻度

 現行のSHK制度では、毎年度の報告が義務付けられているが、森林吸収量の算定に必要となる森林簿データの更新頻度は5年に1回である。よってこれを考慮し、毎年度の算定報告は暫定値で行い、森林簿データ更新時に5年分の吸収量と整合するよう補正を行うこととした。

 木材製品の炭素蓄積変化量の算定については、木材製品の調達(インフロー)・廃棄(アウトフロー)等が無い年度の算定結果は0とする。なお、過年度にインフローを報告した建築物・非建築物を解体・廃棄・譲渡していないことを確認するため、算定対象と炭素貯蔵量を台帳化して継続的に管理し、毎年度報告を行うことを求める。

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