SHK制度において、特定排出者はGHG排出量の算定報告が義務であるのに対して、今回の改正による森林吸収量は、調整後排出量での利用を目的とした、あくまで任意の仕組みである。特定排出者が所有する森林の実態は様々であり、所有林すべての算定報告を求めることは現実的でなく、新制度利用の障壁となると懸念される。
このため特定排出者は、全国で所有する森林のうち、一部を抽出してSHK制度の算定範囲とすることができることとした。ただし、主伐による蓄積減少を意図的に除外することを防ぐため、市町村単位での地理的まとまりにより抽出することなどが条件となる。
算定範囲として含めることとした所有森林のうち、「森林経営計画」や「生物多様性増進活動実施計画」等が作成された森林の区域のみが森林吸収量の算定対象となる。
先述の通り、SHK制度では地上部バイオマスと地下部バイオマスのみを算定対象としており、これら「生体バイオマス」の炭素蓄積量は、【(①幹材積)×(②拡大係数)×(1+(③R/S比))】×(④容積密度)×(⑤炭素含有率)という計算式により算定される。「幹材積」は、森林簿データ又は実測値を使用する。
ここでN年の期首と期末の炭素蓄積量の差に、44/12(CからCO2への換算係数)を乗じることにより、N年(1年間)の森林吸収量(生体バイオマス吸収量)が算定される。
SHK制度の算定対象は原則、生体バイオマス(地上部+地下部バイオマス)であるが、森林から農地への転換など土地利用変化を伴う場合は、土壌炭素プール(枯死木、リター、土壌有機物)の炭素蓄積変化量の算定も求められる。
また、自然災害や病虫獣害等の自然攪乱による被害を受けた林分は、その被害の原因が自らの責任によらないと算定報告主体が判断した場合、その理由の報告を条件として、当該林分の炭素蓄積の減少を算定から除外することができる。これにより、被害跡地の復旧・再生に取り組むインセンティブ(吸収量の増加)を事業者に与えることとした。
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