「なぜできない?」は「どうしたらできる?」に変えてみる「心のスイッチ」で心の状態を変える(2/2 ページ)

» 2009年01月28日 18時05分 公開
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「なぜ会議する?」は「会議は意味がない」と思い込んでいるから

 例えば月曜日の朝7時半にミーティングがあるとします。

 そうすると、「なんでこんな朝早くからミーティングをするんだよ」という問いかけが出てきます。この場合、素朴に「なんでかな?」と思っているわけではないんです。“ミーティングが嫌だ”とか“つまらない”とか“意味がない”という思い込みが含まれているのです。もしかしたら、ちゃんと意味あるミーティングになるかもしれない。

 でも過去の経験から、“ああ、あのミーティングだよ”と思い込んでいる。ミーティングが土曜日だったら、「なんで休みの日にミーティングするんだよ」、水曜日の22時だったら「なんでこんな夜遅くにするんだ」となります。これは、本当に「なぜ?」と思っているわけではなくて、“ミーティングはつまらない”という思い込みから出てくる問いかけなのです。

 また、例えば「仕事を2日休んで企業研修に行きなさい」と言われたら、「なんでこんな忙しい時に研修に行かなくちゃいけないんだ」という問いかけが頭の中で流れます。それには、思い込みとして、“企業研修はつまらない。退屈だ”という意識があります。その証拠に、同じ日に「2日間、熱海に温泉旅行に行っておいで。お刺身を食べて、ゴルフをし放題!」と言われたら、「なんでこんな忙しい時にゴルフをするんだよ」という問いかけは出てこない。同じ忙しい時期でも、「なんていい会社なんだ」という問いかけになるでしょう。

 つまり、“研修はつまらない、ゴルフは楽しい”という前提があるのです。だから、問いかけを変えることで、思い込みを変えられます。結果的に心の状態も変わります。場合によっては、答えまで変わる時があります。

「なぜ?」ではなく「どうしたら?」――問いかけを変えれば好転する

 「なんで朝から会議なんだろう」という問いかけをする前に、「どうしたら意義ある会議にできるだろう」「どうしたら結果を出せる会議になるだろう」「どうしたらみんなの意見を聞ける会議になるだろう」「どうしたら楽しい会議になるだろう」「どうしたら短い会議になるだろう」というように、「どうしたら」と問い続けるうち、楽しくできる可能性を見い出し、心の状態がよくなるかもしれません

 でも、こういうと「平本先生。このミーティングは定例で、役員連中の自己満足なんですよ。顔を揃えることだけのミーティングで、楽しくならないし、結果も出ないんです。僕が問いかけたところで変わらないし、問いかけても嘘っぽいんですよ」という人が出てきます。こういうどうしようもない場合は、次のような問いかけをすればいいんです。

 「役員連中は、どんな動物の顔をしながらやっているだろう」「この部長はどんな動物?」といった問いかけ。すると、「あいつはサル、あいつはタヌキ、こいつはキツネ……」と答えが出て、ミーティングでいい結果は出ないかもしれませんが、気分は楽しくなります。必ずしも、結果を出す必要はない。でも、心の状態は変わります。「サル、キツネ、タヌキ」とやっていると、楽しく苦痛なく過ごせます。

草むしりする時間やお金がなくても「どうしたら楽しくできる?」で解決

 問いかけを変える例として、もう1つ紹介しましょう。

 家の庭に雑草が生えています。嫌だな、草むしりしなきゃな、と思います。すると、「草むしりする暇があるかな」という問いかけが出てきます。この問いかけの中には“暇がないと草むしりできない”という思い込みがあります。結果として、本当に暇がなくて草むしりできないと、心の状態は落ち込みます。

 この場合は、問いかけを変えればいい。自分が草むしりしなくてもいい。雑草を刈る業者を雇えばいい、ということにすると、今度は「雑草を刈る業者を雇う金があるかな」という問いかけが流れてきます。「雑草を刈るお金があるかな」という問いかけの中には、“お金がないと雑草は刈れない”という思い込みがあります。お金がないとなると、心は落ち込みます。

 そこで、雑草が生えた庭の前で座禅を組んで、ヒーリングミュージックをかけて、「雑草は存在しない」と思い込もうとします。でも、そんなことをしても現に雑草はある。結局、目を開けると雑草は生えているわけですから、嫌だなと思うだけです。

 草むしりをする暇がない、雑草を刈るお金もないと言いますが、誰が、お金と暇がなくては雑草を刈れないと言ったのでしょう。実はそれは、自分の問いかけなんです。だから、問いかけを変えてほしいのです。

 お金や暇がないなら、こういう問いかけをします。「どうしたらお金も暇もかけずに、楽しく草むしりができるだろうか」と。ずっと問いかけていると、例えば「今週末は草むしり大会。庭を区切って、パパとママと太郎と花子で、用意ドンで草むしり。一番早く雑草をキレイにした人に、おにぎり3個進呈!」というゲームを思いつくかもしれません。今まで、草むしりは嫌な仕事でしたが、ゲームにした瞬間、楽しくできます。

 どうしてそういう答えまで出てきたかというと、問いかけを変えたからです。「誰が草むしりする?」といったら、私は嫌だ、僕も嫌だ、となるけれど、「どうしたら楽しく草むしりできる?」となった瞬間、変わったんですね。

答えは出なくてもいい、大事なのは思い込みを捨てること

 経営者やマネージャーは「景気が悪い」「資金がない」といいますね。「どうして資金がないんだろう」「どうして人材が足りないんだろう」「どうして技術がないんだろう」と、唱えれば唱えるほど、どんなプロジェクトもできなくなります。

 だから、問いかけを変えて、「どうしたら、資金も技術も人材もない状態でこれができるだろう」「どうしたら、半分の資金でこれができるだろう」「どうしたら、今ある技術でできるだろう」「どうしたら、今いる人材でできるだろう」と問い続けてください。

 すぐに答えが出るわけではないでしょうが、マネージャーがそれを口酸っぱく言っていたら、スタッフの誰かから、いいアイデアが出てくるものです。ここで「スタッフに技術がないから無理ですよ」といわれて、「そうだよね」とマネージャーが同意してしまったら、もう無理です。ですから、答えまでは出なくても、問いかけを変えて、思い込みを変えることです。結果的に心の状態を変えることが大事。そうすると少なからず答えが出てきます。

 「なんでこんなに不景気なんだろう」「なんでこんなに資金がないんだろう」「なんで顧客が減るんだろう」というように、「なんで」と問いかければ、いくらでもこの状態は分かります。

 しかし逆に「不景気だからこそ、何ができるだろう」「人が足りないからこそ、できることは何だろう」「資金がない中で、どんな工夫ができるだろう」と問いかけると、すぐに答えは出ないかもしれません。でも問い続けることで心の状態は良くなるし、結果まで変わるのです。


 次回は、問いかけのステップを実践していきます。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本あきお(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は、『すぐやる! すぐやめる!技術 ― 「先延ばし」と「プチ挫折」を100%撃退するメンタルトレーニング』。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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