連載
» 2009年04月27日 10時59分 公開

クリエイティブ・チョイス:目的の目的の目的……を考える

「創造的な選択」とは目的と手段の関係を問い直していくことですが、つい目新しい手段ばかりに目が行きがち。目的をていねいに考えることこそがカギです。目的の目的の目的……を考えるために、目的展開図を作ってみるのもいいでしょう。

[堀内浩二,Business Media 誠]

連載「クリエイティブ・チョイス」について

 問題を「イエスかノーか」に絞り込んでしまってませんか?――。新連載「クリエイティブ・チョイス」は、選択肢以外の「第三の解」を創り出し、仕事や人生の選択において、満足度を高めることを考えます。4月23日発売の書籍『クリエイティブ・チョイス』から抜粋したもので、今回は第1章からです。


 序章で、「創造的な選択」とは目的と手段の関係を問い直していくことだと述べました。われわれはつい目新しい手段の探索に時間を使ってしまいますが、登山の例で見たように、目的をていねいに考えることこそが新しい選択肢を生み出すカギになります。

※ジョン・S・ハモンド、ハワード・ライファ、ラルフ・L・キーニー著の『意思決定アプローチ―「分析と決断」』(小林龍司訳、ダイヤモンド社、1999年)では問題解決にフォーカスし、「問題」と「目的」を明確に分けています。

 目的の定義に重きをおく方法論の1つに、ジェラルド・ナドラーらが提唱する「ブレイクスルー思考」があります。

 成功した人々を研究してみると、みな一様に問題をその背景全体とともにとらえている。そして、彼らは解決策と、拡大された目的の関係を理解しようとしていた。これは、問題に対する目的の系列化〔目的展開〕をさせたことを意味する。彼らを研究するうちに、目的〔展開〕が効果的問題解決に欠かせないことがわかってきた。あらゆる問題をさらに広い視野で眺めることを可能にし、創造力を発揮させるきっかけともなるのである。

ジェラルド・ナドラー、日比野省三著『新・ブレイクスルー思考―ニュー・コンセプトを創造する7つの原則』(海辺不二雄訳、ダイヤモンド社、1997年)

※ブレイクスルー思考も継続的な変革を志向しています。「創造的な選択のらせん」の図案は、本書図10-1「改良の螺旋性」を翻案したものです。

 「拡大された目的」とは、より大きな目的。目的の目的の……目的ということです。それでは、大きな目的を考えることで選択肢が広がる事例をもとに考えてみましょう。

ケース

 田中さんは、OA機器の中堅メーカーB社でセールスを担当してきた。入社10年目の今年、かねてからの希望がかなってプロダクトマネジャーとなったばかりである。担当は、PCなどのハードウェアを持ち運ぶOAカバン事業。

 B社のOAカバンは飽和気味の市場のなかでジリジリと市場シェアを落としており、抜本的な対策が求められている。自社サイトに寄せられる顧客の声を分析すると、最近のB社の製品は同じカテゴリに属する他社製品に比べて野暮ったく感じるという意見が多かった。

 製品開発チームはこの声に基づいて改善策を提案した。有名デザイナーにデザインを依頼し、他社を上回る色のバリエーションをそろえるという。しかし提案を受けとった田中さんは、チームの提案がどこか近視眼的になっていると感じ、ほんとうにこの案が最善かどうかを再考してみることにした。


 抜本的な対策、すなわち「創造的な選択」を模索する田中さんが発すべき問いは、「もっと斬新なアイディアはないか?」ではありません。アイディアの価値は「新しい」かどうかではなく、「問題を解決する」かどうかで測られるべきだからです。

 そのためには、そもそも何が問題なのかをよく理解する必要があります。そこで田中さんは、製品開発チームに提案の目的を確認してみました。返ってきた答えは「顧客からの支持を回復する」でした(図2-2)。

 「回復」という言葉から、田中さんは製品開発チームがB社のカバンをすでに使っている人の期待に応えようとしていることに気づきました。


 しかし、既存顧客の期待に応えるだけでは抜本的な対策になるとは思えません。そこで、今実施すべき対策の目的をできるだけ大きく展開してみました(図2-3)。目的をさかのぼるイメージを示すために大まかにつないでいます。実際の問題解決に活かすならば、もっと細分化する必要があるでしょう。

 目的を図2-3の「3 顧客からの支持を獲得する」と再定義すると、既存顧客だけでなく新規顧客からの支持を得ることも目的に含まれます。そこから考え下ろしていけば、「製品のデザインを改良する」以外にも、新しい顧客を開拓する、販売チャネルを拡大する、新しいラインアップを追加するなどなど、さまざまな選択肢があり得ます。このケースについては第2章で具体的に選択肢を洗い出してみます。ここでは、目的をはっきりさせることが選択の第一歩である、という感じをつかんでいただければOKです。

 「飽和気味の市場の中でジリジリと市場シェアを落としている」といった状況を踏まえると、短期的には図2-3の「4」あたりのレベルで問いを立てるのが妥当そうです。しかし、プロダクトマネジャーとしては、本来「6」あたりの長期的な視点で考えておきたいところでもあります。いったんその高さから考え下ろしてみることで、短期的にも有効な選択肢を思いつけるかもしれません。

 目的展開図は現在の行動と将来の目的を関連付けてくれる強力なツールです。前述したナドラーは目的をしっかりと洗い出すために、このようなチェックリストを用意してくれています。

目的を洗い出すためのチェックリスト

  • 目的を列挙したか?
  • 問題に対する目的を拡大したか?
  • 問題に対する目的をさらにいっそう探求したか?
  • 達成しようとしている目的は何か?
  • もっと大きな目的は何か?
  • 何を達成しようとしているのか、ほんとうに分かっているのか?
  • 顧客の目的、またその顧客の顧客の目的は何か?
  • 小さな目的達成の必要をなくすような、よりいっそう大きな目的は何か?

今日のクリエイティブ・チョイス「まとめ」

 より高い目的から考え下ろせば、より広い選択肢を考えることができます。

著者紹介:堀内浩二(ほりうち・こうじ)

株式会社アーキット代表。「個が立つ社会」をキーワードに、個人の意志決定力を強化する研修・教育事業に注力している。外資系コンサルティング企業(現アクセンチュア)でシリコンバレー勤務を経験。工学修士(早稲田大学理工学研究科)。著書に『「リスト化」仕事術』『リストのチカラ』の文庫化/ゴマブックス)がある。グロービス経営大学院客員准教授などを兼任。


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