インタビュー
» 2010年03月25日 13時15分 UPDATE

Amazon Kindle DTP:僕から出版社にお金を分配する未来――電子書籍出版秘話 (1/3)

「僕にAmazonからお金が入って、僕の方から出版社にお金を払うという、ヘンなお金の動きが発生する可能性があります」というのは、Kindle Store初となる日本語マンガ「AOZORA Finder Rock(青空ファインダーロック)」を出した小沢高広氏。その真意とは。

[山口真弘,Business Media 誠]

 Amazon Kindleで読める日本語マンガ「AOZORA Finder Rock(青空ファインダーロック)」。1月下旬に日本語のマンガとしてはKindle Store初となる、この試みを行ったのが、コミックバーズの「大東京トイボックス」などで知られる、2人組の漫画ユニット「うめ」。前回に引き続き、うめの原作/演出を担当する小沢高広氏に聞いた。

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AppleよりAmazon、AmazonよりもPDF

st_kd10.jpg 小沢氏

誠 Biz.ID 価格設定(0.99ドル)についてはいかがですか。

小沢氏 そうですね、今回のものに関しては実は適正だと思っているところがあって、いまこれ26ページなんですね。そうすると、単行本というのはだいたいA5版ならだいたい120〜150ページ程度なんで、これがいま1ドル100円だとして600円だと思うと、6倍するとだいたい150ページくらい。まあそんなもんかなという感じがしていて。(注:価格は当初2.99ドルに通信費2.00ドルを加算した計4.99ドルだったが、現在は値下げし0.99ドル+通信費2.00ドルの計2.99ドルとなっている。通信費2.00ドルはKindleで購入する際の固定費で、著者の側ではコントロールできない)

誠 Biz.ID 今後まとまった作品が出てくるとして、同様にページあたりの単価を逆算して出てくることになるんでしょうか。違う価格体系、例えばほかがこの価格だからいくら、という考え方もあると思いますが。

小沢氏 値段設定は正直これからどんどん動いてくるところだと思うんですが、原稿料を出版社が出しているか否かという問題があるんですね。今回の作品に関してはそれ自体でペイできる原稿料をいただいているので、まあ、売り上げは正直どうでもいいんです。ただ、一切そういうのは抜きにして、自分で描いてこれだけでやりますとなった時に、どうなるかという試算はまだ正直ちゃんとはしていないですね。もうすこしデバイスが普及しないときついかなという気はします。

誠 Biz.ID かつて音楽アルバムはiTunesの登場によって価格がバラバラになったわけですよね。マンガもいままで単行本という同じような形だったわけですが、逆にこの本にはこれだけ原価がかかったのでこの価格で売りたいとか、継続して次の巻も出すにはこれくらい必要とか、価格設定というのは電子書籍になって作家目線で決められるようになるんじゃないかという気もします。そのあたりはいかがですか。

小沢氏 おそらく過渡期にありうるのは(本と電子書籍を)両方出すということですね。モノで買いたい人は買うというのがまず過渡期にあって、普及して本の値段より(電子書籍の方が)いいよねとなった時にどうなるか。ただ、単行本自体の価格というのは上がってないようでけっこう上がってるんですよ。(マンガ編集者の)竹熊健太郎さんなどはマンガの単行本は1000円いくらにしないと原稿料は出ないよねという話をしてらっしゃいますし。

誠 Biz.ID PDFで売ってしまった方がいいのでは、という話もありますよね。

小沢氏 本当にその、PDFで売っちゃえよという気がするんです。もちろんAmazonで70%オプションという話とかは景気よく話されてはいるんですが、自分で売っちゃえば100%ですからね。PDFを売っちゃいけないという決まりはないですし。

 PDFだと何がいいかって、Kindle DXに対応した600×800ピクセルの高解像度データが作れるんですね。で600×800ピクセルになったらもうルビまで読める。いまの日本の紙印刷の美術書の技術とかってすごいんで、画集のような形のものは正直まだまだだと思うんですが、マンガの場合グラデーションの階調がある程度飛んじゃってもそんなにマンガの面白さって変わんないんですよね。いずれそこは解消されるはずの部分なので、あまり神経質にならずにどんどんやっちゃっていい気はしますね。できる限りのベストは尽くすけれど、やらないという選択肢は違うかなと思います。

 そうなった場合のメリットは、Amazonとかの倫理基準が関係なくなるんですね。ここ数日、iPadよりもKindleの方がマンガビュワーとして可能性があるんじゃないかという気がしてきまして。Apple(のApp Store)でこのあいだ、グラビア系の一斉削除事件があったじゃないですか、あれとか見てると怖いなという気がして。いまちょうど非実在青少年の件が話題になってますが、あれよりも恐ろしいことを一瞬でやってるんですよね。あれはまだ法律なんでどういうふうに運用されるかという段階があったりするんですが、Appleって作品を一瞬で消す、怖いなっていう気はしていて。

 そういう意味ではjailbreak(英語で脱獄の意。App Storeで販売や配布をしていない、Appleが認めていないアプリをiPhoneiPod touchにインストール可能にすること)をしない限り、iPadで自由にコンテンツを見ることっていうのはどこまでできるのかなと。もちろん内容に踏み込んで消せるわけはないんですが、それを考えるとPDFでどんどん売っちゃうというのは面白いなと思ってて。iPadならiComicとかありますし、販売とかまで考えるとこっち(=PDF売り)の方がユルそうかなという気がしていて。モノクロでとりあえず大丈夫ですし。

個人で出してる作家さんいますよね、って言えるだけでもだいぶ違う

誠 Biz.ID この記事の読者には、おそらくKindleによる電子出版に興味がある人は多いと思うのですが、小沢さんとしてはいかがでしょう。おすすめでしょうか。

小沢氏 そもそもKindleでの電子出版を始めたきっかけというのが、一応これは1月24日の夕方にやっていたんですが、実はやるって決めてから1週間くらいしか経ってないんですね。思い立ったのは。日本電子書籍出版社協会というのが記事になっていたんですね。大手出版社二十数社が集まって2月中にどうのこうのという記事もあって、その中で確か講談社の野間(省伸)副社長が、デジタル化で出版社が作品の二次利用ができる権利を著作者とともに整備していくということを言ってて、その一文がなんど読んでも理解できなかったんですね。Amazonが著作者に直接交渉して電子出版を図れば最初に本として刊行した出版社はなにもできない、とも言ってて。これに非常に頭に来まして。だってあんたら絶版にしてんじゃん、ていう。

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