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» 2011年12月15日 11時00分 UPDATE

説明書を書く悩み解決相談室:地味な「基本動作」がエラー率の低減につながる法則 (1/2)

今回は相談室はお休み。一見すると地味な作業のような基本動作が、説明書を書く上でも大切である、というお話をします。

[開米瑞浩,Business Media 誠]

 「説明書を書く悩み解決相談室」第7回です!

 先日、文書化能力向上研修の後に参加者から「声が森本レオに似てますね」と言われてしまいました(笑)。実はこの10年ぐらいの間に同じことを10人ぐらいに言われているので、結構本当かもしれません。森本レオさんといえば独特の癒しボイスで有名なのでちょっとうれしい私です。自分ではあまり自覚がないんですけどね。

 ……なんて、無駄話はこのぐらいにして、本題に入りましょう!

 「説明書を書く」ことに悩んでいる人の相談に乗るという形でお届けしている当連載ですが、今回は「相談」を1回お休みして「基本動作の軽視はエラー率の上昇を招いてしまう」という話を書くことにします。

基本動作の軽視はエラー率の上昇を招く

 「エラー」というのは要するに失敗です。ミスです。例えば私は以前「じゃ、次回のミーティングは17(じゅうしち)日で」と電話で話したところ、それが「11(じゅういち)日」と受け取られて失敗したことがありました。単純な数字の聞き違えではありますが、この種の単純ミスでも、重要な日程についてやらかすと大変な損失を招きます。極力減らしたいものです。

 そしてこの種のミスを減らすために重要なこと、それが「基本動作」です。といってもこれだけでは分かりませんね。例えば、鉄道や工場、医療機関など、事故が起きると直接人命にかかわりやすい業務を行う組織では「基本動作」として次のような行動を指導しています。

  1. 指差呼称(ゆびさしこしょう):自分が行う作業を目と指と口で確認する
  2. 対面報告:相手に向き合い、相手の目を見て伝える
  3. 復唱:受け取った情報を発信者に確認するために復唱する

 私が「17日と11日の伝達ミス」をやらかした時も、復唱をきちんとしていれば防げた可能性が高いですね。これらの基本動作はどれも1つ1つの難易度は高くありません。動作としては単純なものばかりです。ただ、それをバカにせず凡事徹底することが求められます。もし徹底することを忘れると、どこかでエラーが入り込みます。それが重要な場面で起きると、まさしく人命にかかわるか、あるいは高額の損失をもたらすような失敗につながりかねません。

 ところがこの基本動作が軽視されていることがあるわけです。実は仕事のスキルはこんな階層になっていて、

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 基本動作という土台の上に「専門分野での知識・経験・技能」が乗って業務遂行能力になります。この基本動作の一例が前述の指差呼称のようなものですが、専門分野のスキルが多種多様、高難易度であるのに比べると、基本動作は種類も少なく簡単に見えます。そのためどうしても軽視されやすく、初心者のうちは守っていてもある程度熟練してくるとついつい省略したがる傾向が出てきます。これは非常に悪い兆候で、遅かれ早かれ何らかの事故が起きることは避けられません。その規模が大きいか小さいかは運次第です。

説明書を書くための基本動作とは?

 そこで、当連載のテーマである「説明書を書く」という仕事についての基本動作とは何かを確認しておきましょう。

 例えば連載第5回では、「構造上の特徴が性質を持ち、用途を得る」というパターンをご紹介しましたが、このパターンは基本動作に該当するものでしょうか、それとも専門知識でしょうか?

 実は、少なくとも説明書を書くという仕事においては、これは専門知識に該当します。そして基本動作は情報を分解して、分類して、見出しを付ける習慣のことなんですね。

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 複雑な文書があったとして、そのままではなかなか通じないので分解して分類して見出しを付けて、分かりやすく整理したとしましょう。そうすると例えば第5回で紹介した「構造・特徴・性質・用途」であったり、第1回の「背景・問題・理想・解決策」であったり、第2回の「素材・加工・用途」であったり、と固有のパターンが現れます。

 この固有のパターンは、非常に多種多様です。類似事例を知っていれば短時間で発見できますが、知らないと時間がかかるし、似てはいても微妙に違うパターンになるケースも多く、正確に読み取るのは難しいものです。固有のパターンという結果を丸暗記するだけでは対応できません。

 だから、基本動作が大事で「分解・分類・見出し付け」という基本動作を普段からしっかりやる習慣を付けていなければなりません。基本動作を通じてこれはどう解釈すればいいんだろう……? と悩んだ上で「構造・特徴・性質・用途」というパターンを知ったのであれば、「なるほど、そうか!!」という納得感も得られますし記憶にもよく残ります。似て非なる少しだけ違うパターンが出てきても、応用が効きます。しかし、基本動作をやらずに結果のパターンだけを覚えて使おうとしてもなかなかうまくいきません。

 基本動作は一見すると地味な作業です。地道に分解して分類して見出しを付けてもすぐに答えが出てくるとは限りません。それよりも、結果として出てくる固有のパターンを、誰かが発見してくれたそれを覚えておく方が確実に役に立ちそうに見えます。だから基本動作を軽視する、そんな傾向がやっぱりあります。でもそれでは応用が効きません。どうしても細かいミスが多発します。エラー率を上げないためには、基本動作をおろそかにしないことが大事なんです。

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