これからの時代を生き抜くのに必要な「プチスキル」とは?一生食える「強み」のつくり方(2/2 ページ)

» 2014年04月16日 11時00分 公開
[堀場英雄,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

問題点2:プロスキルは「突然死」する可能性がある

 プロスキルで次に怖いのが、スキルやキャリアの「突然死」です。今までは資格を取得すれば安泰と言われていた弁護士や会計士や医師ですが、すぐに食えなくなるとまではいかなくても、あこがれの仕事ではない時代が来るかもしれません。

 実際、医師の世界ではこんな異変が起きています。インドのメディカル・ツーリズム(手術などの医療行為のための旅行)の事例です。

 ニューデリーのアポロ病院は、米国の医療機関評価機構(Joint Commission International)から、外国患者受入れにあたっての国際基準適格認定を取得。アポロ病院グループに属する一部の病院の株式は公開され、高収益企業として高く評価されています。インドで治療を受ける最大の魅力は医療費の安さにあり、インドでの心臓バイパス手術の費用は、付き添い1人との個室での滞在費を含め8500ドル(約85万円)程度です。これが米国でなら約10万ドル以上で、平均するとインドでの医療費は米国の10〜20%で済むのです。

 手術費用が10分の1になれば、当然、医師の人件費、つまり給与も下がります。グローバル化は医師のようなプロですら価格競争にさらしてしまう可能性があるのです。

 これからの時代、働く期間は確実に伸びます。50年にわたり1つのスキルで稼ぎ続けるというのはあまりにも非現実的ではないでしょうか。半世紀の間には、どれだけ考えてスキルを選んでも突然死に見舞われそうです。このような時代に、1万時間(10年)の時間をかけて1つのプロスキルを習得するのはリスクが高すぎるのです。

問題点3:最高の技術よりも、かしこい組み合わせが求められる時代

 以前、iPhoneを分解した日系企業の技術者は、個別の構成品を見て「どれも大した技術じゃない」と言ったそうです。それは確かに事実だと思いますが、なぜそこそこの技術の集合体であるiPhoneが爆発的な人気を得たのかを考えることが大事です。

 例えば、ユーザーが携帯のカメラに求めるのは、気軽に写真をたくさん撮ってネット上でシェアしたいということかもしれません。そうだとすると、画素数を競い合うことに大した意味はないのです。それよりも求めているのは、簡単な操作ですぐネットにアップできるアプリなどとの「組み合わせ」なのです。

 同様に、iPodの開発においても組み合わせ思考の重要性を示す例があります。『スティーブ・ジョブズ II』(ウォルター・アイザックソン著、講談社)の中に出てきたストーリーを紹介しましょう。

 開発当時、iPodに必要な技術要素は、小型液晶とバッテリー、1000曲入るハードディスクで、このうちハードディスクだけが見つかっていませんでした。当時アップルのサプライヤーだった東芝は、1ドル硬貨と同じ大きさの超小型で容量は5ギガバイトのハードディスクを開発中だが用途を思いつかないと伝えたそうです。もちろんアップルには用途が見えているので、交渉の末、東芝は10億円(1000万ドル)で、小型ディスクの独占供給の権利を与えてしまいます。1つの技術を極めてもやり方を間違えると、自分にメリットがなくなってしまうのです。

 長々と商品の話をしましたが、これは個人のスキルに関しても同じことが起きると考えられます。例えば、企業がエンジニアを雇いたい場合、地方のある程度のレベルの大学を卒業した人間でも、東京大学卒業の人間でも大した差はないかもしれません。なぜなら超優秀なエンジニアを雇うなら、コスト10分の1でインドのトップの大学の人材を雇える可能性があるからです。そうすると、エンジニアとしてのスキルの差よりも、そこに英語や他のスキルを組み合わせられる人のほうが、重宝される可能性が高いのです。

(つづく)

著者プロフィール:

堀場英雄(ほりば・ひでお)

1978年生まれ。名古屋大学卒業、米国の大学院卒業(原子核工学修士)。

20代はGE、BCGといった一流外資企業でプロとしての成功を一途に目指す。

30代になり大手日系メーカーに勤務しながらも、今まで習得してきた「英語力(米国大学院)×財務スキル(GE)×戦略立案力(BCG)」のかけ算で、オンライン英会話学校バリューイングリッシュを設立。同校の学長を務める。

多忙な留学・社会人生活の中でも、効率的に次々とスキルを習得する力には定評がある。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ